税務調査が多い業種ランキング【国税庁5年データ】申告漏れの実像と備え方

税務調査が多い業種ランキングのアイキャッチ。元国税調査官のシロクマくんが業種別データを調べるイラスト


令和6事務年度、個人事業主の申告漏れ所得ランキングで1位になったのはキャバクラ、2位は眼科医でした。どちらも前年は10位以内に入っていません。税務調査は、不正をした人のところにだけ来るものではないのです。

このページは、国税庁が毎年公表しているデータの直近5年分と、元国税調査官が国税庁などに行った開示請求で入手した内部資料をもとに、税務調査で申告漏れが多い業種、狙われやすい取引、そして国税が調査先をどう選んでいるのかを一枚にまとめた資料です。毎年新しい発表が出るたびに更新していきます。

ひとつだけ、最初に共有させてください。これから業種ごとのランキングを紹介しますが、上位の業種が不正をしているという意味ではありません。あくまで税務調査で見つかった申告漏れの金額が、構造的に大きくなりやすい業種という意味です。

このページの目次

税務調査の全体像をまず数字でつかむ

個別の業種に入る前に、税務調査全体の規模を押さえておきます。下の表は、国税庁が公表している個人への所得税の調査等の状況を、令和2事務年度から令和6事務年度まで並べたものです。事務年度というのは、たとえば令和6事務年度なら令和6年7月から令和7年6月までの実績を指します。

項目 R2 R3 R4 R5 R6
調査等の合計件数 50.2万件 60.0万件 63.8万件 60.5万件 73.6万件
うち非違(申告の誤り等)件数 27.9万件 31.7万件 33.8万件 31.1万件 36.9万件
実地調査の件数 2.4万件 3.1万件 4.6万件 4.8万件 4.7万件
簡易な接触の件数 47.8万件 56.8万件 59.2万件 55.8万件 68.9万件
実地調査1件当たりの追徴税額 224万円 256万円 219万円 224万円 241万円

出典:国税庁「令和2〜令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」

ここで言葉を整理しておきます。調査等というのは、調査官が自宅や事務所に来て帳簿を調べる実地調査と、文書や電話で確認をうながす簡易な接触を合わせたものです。表を見ると、件数の大半は簡易な接触で、実地調査はそのうちの一部だとわかります。

注目してほしいのは一番下の行です。実地調査が1件あると、追徴税額は平均でおよそ224万円から241万円。令和2事務年度はコロナ禍で実地調査の件数をしぼり、高額で悪質な事案に絞り込んだため、1件当たりの金額がかえって上がっています。税務調査がどのくらいの確率で来るのかは、業種ごとの母数とあわせて税務調査の確率を個人と法人で整理した記事でくわしく扱っています。調査官が実際に何人で来るのか、誰が来るのかという疑問は、調査官の人数を解説した記事を読んでみてください。

申告漏れが多い業種ランキング 令和2〜令和6の5年推移

ここからが本題です。国税庁は毎年、事業所得がある個人のうち、1件当たりの申告漏れ所得金額が高額だった上位10業種を公表しています。下の表は、その5年分を横に並べたものです。数字は1件当たりの申告漏れ所得金額、かっこ内は加算税を含む追徴税額です。いずれも単位は万円です。

令和6事務年度に税務調査で申告漏れが多かった業種ランキングの棒グラフ。1位キャバクラ4,164万円、2位眼科医3,894万円、3位ホステス・ホスト2,968万円
令和6事務年度 申告漏れが多い業種ランキング(1件当たり申告漏れ所得金額)
順位 R6 R5 R4 R3 R2
1 キャバクラ 4,164(1,474) 経営コンサル 3,871(1,040) 経営コンサル 3,367(676) 経営コンサル 2,266(611) プログラマー 4,927(716)
2 眼科医 3,894(964) ホステス、ホスト 3,654(507) くず金卸売業 2,483(952) システムエンジニア 2,150(519) 畜産農業(肉用牛)3,515(503)
3 ホステス、ホスト 2,968(475) コンテンツ配信 2,381(436) ブリーダー 2,075(454) ブリーダー 2,136(518) 内科医 3,339(805)
4 経営コンサル 2,734(878) くず金卸売業 2,068(683) 焼肉 1,611(319) 商工業デザイナー 1,752(410) キャバクラ 2,834(864)
5 太陽光発電 2,142(757) ブリーダー 2,028(459) タイル工事 1,598(266) 不動産代理仲介 1,656(453) 太陽光発電 2,603(825)
6 バー 1,968(425) 焼き鳥 1,657(427) 冷暖房設備工事 1,520(287) 外構工事 1,517(254) 建築士 2,325(624)
7 コンテンツ配信 1,936(462) 太陽光発電 1,625(119) 鉄骨、鉄筋工事 1,440(261) 型枠工事 1,507(239) 経営コンサル 2,268(477)
8 ブリーダー 1,876(498) 内科医 1,621(408) 太陽光発電 1,391(289) 機械部品受託加工 1,507(319) 小売業・犬 2,051(456)
9 スナック 1,873(353) スナック 1,616(326) バー 1,391(250) 一般貨物自動車運送 1,493(195) 不動産代理仲介 1,804(614)
10 システムエンジニア 1,631(287) 西洋料理 1,517(288) 電気通信工事 1,374(223) 司法書士、行政書士 1,440(358) 商工業デザイナー 1,759(389)

出典:国税庁「令和2〜令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」。金額は1件当たりの申告漏れ所得金額、かっこ内は加算税を含む追徴税額(いずれも万円)。

5年間でいちばん多く登場した業種はどこか

5年分を縦に通して数えると、どの業種が常連なのかが見えてきます。上位10位に登場した回数で並べ直したのが、次の表です。これは国税庁の公表値を5年分横断で集計した、このページ独自のまとめです。

5年間の登場回数 業種
5回(皆勤) 経営コンサルタント
4回 太陽光発電、ブリーダー
2回 ホステス・ホスト、くず金卸売業、内科医、システムエンジニア(プログラマー含む)、コンテンツ配信、スナック、バー、商工業デザイナー、不動産代理仲介、キャバクラ

出典:国税庁「令和2〜令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」をもとに当サイトが集計。

経営コンサルタント・太陽光発電・ブリーダーの1件当たり申告漏れ所得の令和2から令和6事務年度までの5年推移を示す折れ線グラフ
5年間の常連業種 1件当たり申告漏れ所得の推移

5年間で読み取れる3つの動き

まず目を引くのが、令和6事務年度のキャバクラ1位と眼科医2位です。どちらも前年は10位以内に入っていなかった業種が、いきなり上位に飛び込んできました。

反対に、5年間ずっとランキングに入りつづけている業種もあります。登場回数の表のとおり、5年連続で皆勤しているのは経営コンサルタントだけです。令和3から令和5事務年度までは3年連続で1位でした。太陽光発電とブリーダーが4回でこれに続きます。

3つめの動きは、その年の経済を映すという点です。コロナ禍の令和2事務年度は、プログラマーが1位、畜産農業や内科医が上位に並びました。巣ごもり需要や特需で売上が伸びた業種が、翌年あたりに調査の対象として表面化する。ランキングの入れ替わりそのものが、時代を映す鏡になっています。

ランキングの数字を読むときの大切な注意

ここはとても大切なので、はっきり書いておきます。この1件当たり申告漏れ所得金額という数字は、税務調査で申告漏れが見つかった案件をもとにした金額です。その業種の平均的な所得でもなければ、その業種の不正率でもありません。

金額が大きく見える業種でも、ごく一部の大口の事案が平均を押し上げていることがあります。だからこそ順位は毎年入れ替わります。ランキングは、特定の業種を責めるためのものではなく、自分の仕事にどんな落とし穴がありやすいかを知るための地図として使ってください。

上位業種で申告漏れが大きくなりやすい構造

では、なぜこれらの業種で金額が大きくなりやすいのでしょうか。理由は業種ごとの構造にあります。

キャバクラやホステス、ホスト、スナック、バーといった現金商売は、売上が現金でやりとりされるため第三者の記録が残りにくく、あとから売上はこの金額で合っていますかと確認されやすい性質があります。飲食店全体の着眼点は飲食店の税務調査の記事で具体的に整理しています。

経営コンサルタントやシステムエンジニアのように、仕入や原価がほとんどないお仕事は、売上がそのまま所得になりやすく、1件当たりの金額が大きく出ます。これは悪いことをしているという意味ではなく、利益の絶対額が大きいぶん、経費の妥当性が論点になりやすい構造の話です。

眼科医が令和6事務年度に2位に入ったのも、レーシックなどの自由診療が1件あたりの単価が大きく、少しの計上のズレでも金額に跳ねやすいことが背景にあります。ブリーダーは、販売用の子犬や子猫が棚卸資産にあたり、原則として売れたときに売上原価として費用になります。繁殖用として飼育している親は、事業用の固定資産として減価償却の対象になります。在庫の計上や、繁殖台帳と売上の突き合わせが着眼点になりやすく、くわしくはブリーダーの税務調査の記事で扱っています。太陽光発電は、設備代を買った年に全額経費にできると誤解されやすく、所得の区分や減価償却の検算が論点になります。これは太陽光発電の税務調査の記事で解説しています。

そのほかの業種についても、それぞれの着眼点を業種別ガイドにまとめています。自分の仕事に近いものから読んでみてください。

業種 調査でよく見られる点 詳しい記事
せどり・ネット物販 仕入と在庫の計上、プラットフォーム入金との突合 せどりの税務調査
美容室 現金売上、予約サイトの記録との突合 美容室の税務調査
歯科医院 自由診療の計上、保険診療との区分 歯科医院の税務調査
デザイナー 家事按分、外注費の扱い デザイナーの税務調査
音楽家・演奏家 出演料の計上時期、機材の経費区分 音楽家の税務調査
整骨院・接骨院 自費施術の現金売上、保険請求との区分 整骨院の税務調査

狙われやすいのは業種だけではない

業種とは別の切り口で、国税がとくに力を入れている取引の区分があります。下の表は令和6事務年度のもので、所得税の実地調査のうち特別調査と一般調査を母集団とした1件当たりの数字です。全体比は、同じ母集団の平均である1件当たり追徴税額299万円を基準にした倍率です。

区分 1件当たり追徴税額 全体比 1件当たり申告漏れ所得
富裕層 855万円 2.9倍 3,449万円
海外投資等がある富裕層 1,595万円 5.3倍
海外投資等を行う個人 866万円 2.9倍 3,459万円
暗号資産等の取引 745万円 2.5倍 2,538万円
シェアリングエコノミー等の新分野 305万円 1,595万円
無申告(所得税) 524万円 1.8倍 2,992万円

出典:国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」。倍率は所得税の実地調査(特別・一般)の1件当たり追徴税額299万円を基準とした値。業種別ランキングとは母集団が異なるため単純比較はできない。

とくに目を引くのが無申告です。1件当たりの追徴税額524万円は過去最高で、前年の417万円から大きく上がりました。確定申告をしていないこと自体が、調査の重点項目になっています。副業の申告については副業の税務調査の記事、ネット配信や動画投稿の収入についてはユーチューバーの税務調査の記事でくわしく解説しています。

暗号資産も見逃せません。日本円に換えていないから税金はかからない、と思っている方がいますが、これは正確ではありません。売らずに保有しているだけの含み益には課税されません。けれども、商品の購入や他の暗号資産との交換など、使って手放した時点では、円に換えていなくても所得とみなされ、課税されることがあります。データのとおり、暗号資産取引は1件当たり745万円の追徴と、全体の2.5倍の水準です。

国税はどうやって調査先を選んでいるのか

ここからは、一般にはあまり出回らない内部資料の話です。シロクマくんは、元国税調査官が国税庁などに行った開示請求を通じて、国税内部の資料を入手しています。そこからわかった、調査先の選び方の輪郭をお伝えします。

まず、国税が力を入れる重点項目は、令和4から令和6事務年度まで3年連続で同じ内容でした。消費税の適正課税、国際化、富裕層、無申告、そしてシェアリングエコノミーなどの新分野です。毎年ころころ変わるものではなく、腰を据えた長期戦略として取り組まれているとわかります。

調査先の選定には、専用のシステムが使われています。個人課税の分野では、過去のデータや資料情報をもとに調査の候補を抽出する仕組みが運用されています。やみくもに選んでいるのではなく、申告内容と手元の資料を突き合わせて、確認すべき先が絞り込まれているということです。

富裕層については、内部でいくつかの階層に分けて管理されていることもわかっています。資産や所得の規模に応じて区分し、とくに海外投資がある層は、さきほどの表のとおり1件当たりの追徴が突出して大きくなっています。

こうした内部の仕組みは、二次的な情報をまとめただけのサイトには出てきません。元国税調査官が一次資料に当たっているからこそ書ける部分です。

税務調査は来てからでは間に合わない

ここまでの数字を振り返ると、ひとつの事実が見えてきます。税務調査は、不正をした人だけに来るものではありません。現金商売だから、利益率が高いから、その年に売上が伸びたからという構造的な理由で、まじめにやってきた方のところにも、ある日とつぜん通知が届きます。

そして、いざ調査となったとき、税理士にスポットで立ち会いを依頼すると、費用は60万円以上かかることがあります。ケースによっては100万円を超えることもあります。

追徴税額そのものは、本来納めるべきだった税金ですから、備えていてもなくなるわけではありません。けれども、慣れない調査に一人で向き合うのか、調査を知り尽くした専門家とともに向き合うのかで、当日の落ち着きはまるで変わります。だからこそ、いざというときに頼れる相手を、あらかじめ用意しておくことが大切です。

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出典と更新について

このページの数字は、国税庁が毎年公表する報道発表「所得税及び消費税調査等の状況」の令和2から令和6事務年度の各資料、および元国税調査官が開示請求で入手した内部資料にもとづいています。国税庁の公表資料は、毎年11月から12月ごろに新しい事務年度版が発表されます。新しいデータが出るたびに、このページも更新していきます。

本ページの図表は、出典として本ページへのリンクを明記いただければ、自由に転載いただけます。

出典:国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」ほか令和2〜令和6事務年度の各年版、「令和6年分の確定申告状況」。最終更新:2026年6月。

税務のシロクマくん

この記事の監修者

税務のシロクマくん(税理士)

税務署一般部門、特官部門、国税局調査部で国税調査官を長年務め、その実績と経験を活かし、現在は税理士として税金や税務調査の情報を発信中。

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