せどり・物販の税務調査|Amazonの売上データは税務署に筒抜け?元国税調査官が対策を解説

この記事の結論

せどり・物販の税務調査では、プラットフォームの売上データ、期末在庫の棚卸し、仕入れの証拠書類が集中的にチェックされます。Amazon・メルカリの取引データは国税庁が把握できるため、プラットフォーム運営会社への資料照会や反面調査によって取引履歴が把握されることが多く、売上を隠すことは現実的に困難です。

今日からできる3つのこと

  1. 事業用の銀行口座とクレジットカードをプライベートと完全に分ける
  2. 12月31日時点の在庫を数え、棚卸表を作成する
  3. 仕入れのレシート・領収書・ネット購入履歴を全件保管する

せどり・物販に税務調査が入る理由

国税庁がインターネット取引を重点調査している

国税庁は、インターネット取引を行っている個人に対する調査を「重点分野」として明示しています。令和5事務年度(2023年7月〜2024年6月)には、シェアリングエコノミー・ネット通販・ネット広告・暗号資産など、インターネット取引を行う個人に対して約1,800件の実地調査が行われました。

国税庁は「電子商取引専門調査チーム(電商チーム)」を設置し、ネット上の取引について重点的な情報収集・分析を行っています。せどり・物販は、まさにこの重点調査の対象ど真ん中にあります。

プラットフォームの取引データは税務署に筒抜け

「メルカリの取引なんてバレないだろう」「Amazonの売上は把握されていないはず」。これは完全な誤解です。

税務署は、Amazon・メルカリ・楽天・ヤフオクなどのプラットフォーム事業者に対して、法律に基づき取引データの提出を要求できます。誰が、何を、いつ、いくらで売り、どの口座に入金されたか。これらの情報はすべて把握可能です。

プラットフォーム経由の売上は、税務署にとって最も把握しやすい取引のひとつです。確定申告をしていない場合、プラットフォームのデータと申告状況を突き合わせるだけで無申告が判明します。

副業せどりの無申告が急増している

副業としてせどりを始めたサラリーマンの中には、「副業の所得が20万円以下なら申告不要」というルールを誤解して、確定申告をしていない人が増えています。

この「20万円ルール」は所得税の確定申告に限った話であり、住民税の申告は所得金額にかかわらず必要です。また、20万円以下でも医療費控除やふるさと納税で確定申告をする場合は、副業の所得も含めて申告しなければなりません。

国税庁は無申告者に対する調査も重点分野として公表しています。「少額だからバレない」という考えは、インターネット取引においては通用しません。

せどり・物販の税務調査で重点的にチェックされるポイント

売上の計上漏れ——複数プラットフォームと個人口座の混在

せどりを行う人の多くは、Amazon、メルカリ、ヤフオク、楽天ラクマなど、複数のプラットフォームを同時に使っています。それぞれの売上を正確に把握し、漏れなく申告できているでしょうか。

調査官は、各プラットフォームから取得したデータと、あなたの申告内容を突き合わせます。1つでもプラットフォームの売上が申告から抜けていれば、売上計上漏れとして指摘されます。

また、プラットフォームを通さない直接取引(SNS経由の販売、知人への販売など)がある場合、これも当然申告対象です。個人の銀行口座やPayPay・LINE Payなどの決済サービスへの入金も、調査官は確認できます。

在庫の棚卸し——「仕入れたら全額経費」は間違い

せどりの税務調査で最も指摘が多いのが、在庫の棚卸しです。

仕入れた商品のうち、12月31日時点で売れ残っているもの(棚卸資産)は、その年の経費にはなりません。これは所得税法の基本的なルールですが、せどりを始めたばかりの人が最も間違えやすいポイントです。

経費にできるのは「その年に売れた商品の仕入れ代金」だけです。年末に手元に残っている商品の仕入れ代金は、翌年以降に売れた時点で初めて経費になります。

調査官は、在庫について以下の3点を確認します。

チェック項目 調査官の確認内容
在庫の数量 棚卸表の数量と実際の在庫数が一致しているか
在庫の単価 1個1個の仕入れ単価が正しく計算されているか
評価方法 届出どおりの評価方法(原価法・低価法など)で計算しているか

品数が多いせどりでは、正確な棚卸しが面倒に感じるかもしれません。しかし、「適当に在庫表を作った」「在庫はゼロと申告した」というケースは、調査官が最も疑う典型的なパターンです。

仕入れの証拠書類——レシートがないと経費が認められない

店舗仕入れのレシート、ネット仕入れの注文履歴・明細書、クレジットカードの利用明細。仕入れを証明する書類がなければ、経費性の立証ができず、その仕入れが経費として認められない可能性があります。クレジット明細・銀行振込記録・取引先発行の請求書など、支払先・金額・内容が特定できる他の資料で立証できる場合もありますが、証憑を残しておくのが原則です。

特に現金で仕入れた場合のレシートは紛失しやすく、注意が必要です。レシートが出ない取引(個人間の仕入れなど)は、日付・相手・品名・金額を記録したメモを残しておきましょう。

ネット仕入れの場合、プラットフォームの購入履歴やメールの注文確認も証拠になります。ただし、アカウントが削除されると履歴にアクセスできなくなるため、CSV形式やPDFで定期的にダウンロードして保管することをおすすめします。なお、2024年1月以降、電子取引(ネット上での仕入れ・売上など)のデータは電子帳簿保存法により電子データのまま保存することが義務化されています。紙に印刷するだけでは不十分です。

返品・キャンセル・返金の処理

Amazon FBAを利用している場合、返品や返金が頻繁に発生します。返品された商品の仕入れ代金は、売上の取消しと合わせて処理する必要があります。

プラットフォームの売上レポートには手数料の差引後の金額が表示されることがありますが、帳簿上は「売上(総額)」と「手数料(経費)」を分けて計上するのが正確な処理です。返品や返金があった場合も、売上のマイナスとして別途記録します。

送料・手数料・梱包材の経費処理

せどりでは、送料、プラットフォームの販売手数料、FBA手数料、梱包材の費用など、細かい経費が大量に発生します。これらを漏れなく経費に計上するためには、プラットフォームが提供する月次レポートやCSVデータを活用することが効果的です。

ただし、すべての支出が経費になるわけではありません。自分用に購入した商品や、せどりとは無関係の支出を経費に含めていると指摘されます。事業とプライベートの支出を明確に分けることが前提です。

消費税の課税事業者判定

せどりの売上が基準期間(前々年)で1,000万円を超えると、消費税の課税事業者になります。複数のプラットフォームの売上を合算して1,000万円を超えるケースもあるため、注意が必要です。

インボイス発行事業者として登録している場合は、売上金額にかかわらず消費税の申告が必要です。

消費税の納税義務が生じているのに気づかず、無申告のままにしていると、本税に加えて無申告加算税と延滞税が課されます。年間の売上が1,000万円に近づいてきたら、早めに対応を検討してください。

元国税調査官が教えるせどりの税務調査対策

事業用口座をプライベートと完全に分ける

せどりの売上入金と仕入れ支払いは、すべて事業用の銀行口座とクレジットカードで行ってください。プライベートの口座と混在していると、事業の収支が不透明になり、調査官が全取引を1件ずつ確認することになります。

口座を分けるだけで、売上と仕入れの全体像が明確になり、確定申告の作業も格段に楽になります。

12月31日の在庫を必ず数える

毎年12月31日時点で、手元にある商品の数量と仕入れ単価をリストアップした棚卸表を作成してください。自宅の在庫だけでなく、Amazon FBA倉庫に預けている在庫も含めます。FBAの在庫数はセラーセントラルの在庫レポートから確認できます。

棚卸表のフォーマットは、商品名・数量・仕入れ単価・合計金額の4項目があれば十分です。Excelやスプレッドシートで管理すると、翌年の確定申告にそのまま使えます。

仕入れのレシートは全件保管する

店舗仕入れのレシートは月別の封筒に入れて保管する。ネット仕入れの購入履歴はCSVかPDFで月次ダウンロードする。最低限この2つを習慣にしてください。

青色申告の場合、帳簿と証拠書類は7年間の保管義務があります。「3年前のレシートなんて残っていない」では、経費として認められなくなるリスクがあります。

確定申告を必ず行う——無申告が最大のリスク

せどりの税務調査で最も重い処分を受けるのは、無申告のケースです。無申告の場合、通常の追徴課税に加えて無申告加算税(原則15%、50万円超の部分は20%)と延滞税が課され、さらに悪質と判断されれば重加算税(40%)が適用されます。

副業のせどりであっても、年間の所得(売上-経費)が20万円を超える場合は確定申告が必要です。少額でも正しく申告しておくことが、最大のリスク回避策です。税務調査が入りやすい会社の特徴を把握して、リスクを最小限に抑えましょう。

よくある質問

Q. メルカリで不用品を売っただけでも税務調査は来ますか?

生活用動産(衣服、家具、家電など)の売却は、原則として所得税の課税対象外です。ただし、1点30万円を超える貴金属やブランド品の売却益は課税対象になります。また、継続的に仕入れて販売している場合は、不用品の処分ではなく事業所得(または雑所得)として申告が必要です。

Q. せどりの売上はいくらから確定申告が必要ですか?

専業の場合は、所得(売上-経費)が48万円(基礎控除額)を超える場合に確定申告が必要です。副業の場合は、給与所得以外の所得が20万円を超える場合に所得税の確定申告が必要です。ただし、住民税の申告は金額にかかわらず必要です。

Q. Amazon FBA倉庫の在庫も棚卸しに含める必要がありますか?

はい、含めます。手元の在庫だけでなく、FBA倉庫に保管中の在庫、仕入先から発送中の商品(未着品)も、12月31日時点で所有しているものはすべて棚卸資産として計上します。

Q. せどりでも税務調査の事前通知は来ますか?

通常は事前に電話で連絡が来ます。ただし、無申告や所得隠しが疑われる場合は、事前通知なしの無予告調査が行われることもあります。税務調査の事前通知が来たらやるべきことで準備の手順を解説しています。

まとめ——せどり事業者が今日からできること

せどり・物販の税務調査は、プラットフォームの売上データ、期末在庫の棚卸し、仕入れの証拠書類という3つのポイントに集中します。Amazon・メルカリの取引記録は税務署が把握できるため、売上を隠すことは不可能です。正しく申告し、記録を整理しておくことが最善の対策です。

事業用口座を分けること。12月31日の在庫を数えること。仕入れのレシートを全件保管すること。この3つの習慣を今日から始めてください。

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税務のシロクマくん

この記事の監修者

税務のシロクマくん(税理士)

税務署一般部門、特官部門、国税局調査部で国税調査官を長年務め、その実績と経験を活かし、現在は税理士として税金や税務調査の情報を発信中。

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