ブリーダーの税務調査|申告漏れランキング5位の理由と対策を元国税調査官が解説

この記事の結論

ブリーダーは国税庁の申告漏れランキングで2年連続トップ5入りしている注目業種です。税務調査では、現金販売の売上計上漏れ、動物の棚卸資産と減価償却資産の区分、自宅兼飼育施設の経費按分が重点的にチェックされます。

今日からできる3つのこと

  1. 販売した動物の記録(日付・品種・販売先・金額)をすべて残す
  2. 12月31日時点の販売用動物(子犬・子猫)を棚卸資産として計上する
  3. 飼育施設の光熱費・家賃は事業使用割合に基づいて按分する

ブリーダーが税務調査で注目される理由

申告漏れランキングで2年連続トップ5

ブリーダーは、国税庁が毎年公表する「1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な業種」のランキングに、複数年にわたってランクインしています。

ブリーダーの申告漏れランキング推移
事務年度 順位 1件当たり申告漏れ所得 1件当たり追徴税額
令和4事務年度 3位 2,075万円
令和5事務年度 5位 2,028万円 459万円

出典:国税庁「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」「令和4事務年度 同

1件当たり2,000万円を超える申告漏れは、ブリーダーの業界では珍しい数字ではありません。コロナ禍の巣ごもり需要でペット市場が急拡大し、子犬1頭50万円〜100万円で取引されるケースも増えました。売上が急増したにもかかわらず、確定申告の対応が追いついていないブリーダーが少なくないのです。

現金取引が多く、売上の把握が難しい

動物愛護法により、犬猫の販売は「対面説明・現物確認」が義務付けられています。購入者が自宅や繁殖施設を訪れて子犬を引き取る際、銀行振込やカード決済を利用するケースも増えていますが、対面での現金受け渡しもいまだに少なくありません。

現金販売は帳簿に記録しなければ第三者からは見えにくい取引です。しかし、税務署は動物取扱業の登録情報から事業の存在を把握できます。ペットサイトへの掲載履歴、SNSでの販売告知、購入者からの問い合わせ情報なども調査の手がかりになります。

趣味と事業の境界があいまい

「趣味で犬を飼っていたら子犬が生まれて、欲しいという人に譲った」——こうした経緯でブリーダー業を始める人は多いでしょう。しかし、継続的に繁殖・販売を行っている場合、それは税務上「事業」として扱われます。

年間の販売頭数や動物取扱業登録の有無は、事業性判断の要素の一つです。税務上「事業」と判定されるかは、継続性・営利性・記録の実態などを総合的に見て判断されます。趣味の延長だからという意識で確定申告をしていないブリーダーは、無申告として指摘されるリスクがあります。

ブリーダーの税務調査で重点的にチェックされるポイント

売上の計上漏れ——現金販売・ネット販売・仲介取引

ブリーダーの売上は、子犬・子猫の販売代金が中心です。調査官は以下のルートからの売上をすべて確認します。

対面販売(自宅・繁殖施設での現金取引)、ペット販売サイト経由の販売(みんなのブリーダー、ペットのおうち等)、ペットショップへの卸売、仲介業者・ブローカーを通じた販売、交配料(種オスの貸し出し対価)。

特に現金での対面販売は、帳簿に記載しなければ表面上は見えません。しかし、調査官は繁殖台帳(動物愛護法で作成が義務付けられている記録)と売上の突合を行います。繁殖台帳に記録された出産頭数に対して、販売の記録が著しく少なければ、売上除外を疑われます。

動物愛護法に基づく繁殖台帳・販売台帳は、税務調査でも閲覧を求められることがあります。動物の出生・販売・譲渡の記録と、帳簿上の売上に矛盾がないことが重要です。

動物の「棚卸資産」と「減価償却資産」の区分

ブリーダーにとって、動物は大きく2つの区分に分かれます。この区分を正しく理解していないと、経費の計上方法を間違える原因になります。

ブリーダーにおける動物の税務上の区分
区分 対象 税務上の扱い
棚卸資産 販売目的の子犬・子猫 売れるまで経費にならない。12月31日時点の在庫を棚卸しして計上する
減価償却資産 繁殖用の親犬・親猫 「器具備品」として減価償却する(犬・猫は一般的に耐用年数8年)

販売用の子犬・子猫は、せどりの在庫と同じ考え方です。仕入れ(交配費用や購入費用)に飼育費用を加えた金額が原価になり、売れるまで経費にはなりません。12月31日時点で手元にいる販売用の動物は、棚卸資産として計上する必要があります。

一方、繁殖用の親犬・親猫は長期にわたって収益を生む資産です。購入費用は一括で経費にはできず、一般的に耐用年数8年で毎年少しずつ経費化(減価償却)します。

経費の妥当性——飼料代・医療費・施設費の家事按分

ブリーダーの経費で指摘されやすいのが、事業とプライベートの区分です。自宅で繁殖・飼育を行っている場合、光熱費・家賃・水道代などは事業使用分とプライベート使用分を按分する必要があります。

按分の根拠として一般的に使われるのは、飼育スペースの面積比です。自宅全体の面積に対して、飼育施設として使用している面積の割合で按分します。「なんとなく半分」ではなく、具体的な数字で説明できることが重要です。

飼料代や動物の医療費は、事業用個体に対応する部分が事業経費となります。家事使用分・私的飼育分がある場合は、合理的な按分基準で区分する必要があります。ただし、家庭で飼っているペット(事業用ではない動物)のエサ代や医療費を事業経費に含めていると否認されます。事業用の動物と家庭のペットの区分を明確にしておきましょう。

消費税の課税事業者判定

子犬1頭50万円〜100万円で販売している場合、年間20頭も販売すれば売上は1,000万円を超えます。趣味の延長で始めたつもりでも、消費税の課税事業者に該当する可能性があります。

基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円を超えた場合、消費税の納税義務が生じます。インボイス発行事業者として登録している場合は、売上金額にかかわらず消費税の申告が必要です。

消費税の納税義務に気づかず無申告のままにしていると、本税に加えて無申告加算税と延滞税が課されます。売上が1,000万円に近づいてきたら、早めに対応を検討してください。

元国税調査官が教えるブリーダーの税務調査対策

販売記録を1頭ごとにつける

販売した動物について、日付、品種、性別、販売先(氏名・連絡先)、販売金額、支払方法(現金・振込・カード)を記録してください。動物愛護法で義務付けられている販売台帳の記載項目と重なる部分が多いので、販売台帳を充実させる形で対応できます。

この記録があれば、繁殖台帳の出産頭数と販売記録の整合性を調査官に説明できます。死亡や譲渡(無償)があった場合も、その記録を残しておくことが重要です。

12月31日の在庫(販売用動物)を棚卸しする

年末時点で手元にいる販売用の子犬・子猫について、品種、生年月日、仕入原価(交配費用+飼育費用)をリストアップした棚卸表を作成してください。

棚卸しの対象は「販売目的の動物」のみです。繁殖用の親犬・親猫は減価償却資産なので、棚卸しの対象ではありません。

自宅兼飼育施設の経費は面積比で按分する

光熱費、家賃、水道代、インターネット代などは、飼育スペースの面積比で事業使用分を算出します。按分の根拠(平面図、面積の計算根拠)を書面で残しておくと、調査時に説明がスムーズです。

確定申告は必ず行う

ブリーダーの税務調査で最も重い処分を受けるのは、無申告のケースです。令和5事務年度のデータでは、ブリーダー1件当たりの追徴税額は459万円に達しています。無申告加算税と延滞税が加わると、手元に残ったお金では払えないほどの金額になることもあります。

「趣味の延長だから申告は不要」という認識は誤りです。継続的に繁殖・販売を行い、収入を得ている以上、確定申告は必須です。税務調査が入りやすい会社の特徴に該当していないか、一度チェックしてみてください。

よくある質問

Q. 年間何頭くらい販売すると税務調査の対象になりますか?

頭数の基準はありません。税務署は販売頭数ではなく、申告の有無と所得金額で調査対象を選定します。年間数頭でも、高額犬種で売上が大きければ調査対象になり得ます。個人事業主に税務調査が来る確率と選定基準を参考にしてください。

Q. 繁殖用の親犬を購入した費用は一括で経費になりますか?

なりません。繁殖用の犬・猫は減価償却資産として扱われ、法定耐用年数8年で毎年少しずつ経費化します。ただし、青色申告で少額減価償却資産の特例(30万円未満)を適用できる場合は、一括で経費にできることがあります。

Q. 動物の死亡やケガで販売できなくなった場合はどう処理しますか?

販売用の動物が死亡した場合、その仕入原価を損失として経費計上できます。死亡の事実を記録し、動物病院の診断書やカルテがあれば保管しておいてください。

Q. ペット販売サイトの手数料は経費になりますか?

はい、事業に関連する手数料は経費になります。サイトの利用料、掲載料、成約手数料、ワクチン証明書の発行費用なども経費として計上できます。

まとめ——ブリーダーが今日からできること

ブリーダーは国税庁が注目する業種のひとつです。申告漏れランキングで2年連続トップ5に入っていることからも、税務調査の対象として選定されやすいことは明らかです。

販売記録を1頭ごとにつけること。年末の在庫(販売用動物)を棚卸しすること。自宅兼飼育施設の経費は面積比で按分すること。この3つの習慣を今日から始めてください。

税務調査は、来てから慌てるものではなく、日頃から備えておくものです。個人事業主に税務調査が来る確率はゼロではありません。スポットで税理士に依頼すれば60万円以上かかる税務調査対応ですが、シロクマくん税務調査あんしんメンバーシップなら月額約1,000円から(税込)、元国税調査官による事前相談と調査対応のサポートを受けられます。

個人事業主の税務調査全体の確率(年間1〜3%)や、税務署がどのような基準で調査対象を選んでいるかについては、個人事業主の税務調査 確率と選定基準|2026年版・業種別ランキングで詳しく解説しています。

税務のシロクマくん

この記事の監修者

税務のシロクマくん(税理士)

税務署一般部門、特官部門、国税局調査部で国税調査官を長年務め、その実績と経験を活かし、現在は税理士として税金や税務調査の情報を発信中。

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