「今度の税務調査、調査官が2人来るらしいんだけど…これって何か意味があるの?」
税務調査の事前通知を受けると、調査官の名前と人数が伝えられます。このとき、1人なのか、2人なのか、3人以上なのかで、調査の種類や目的がある程度わかります。
この記事では、国税に長年勤め、数多くの税務調査を実施してきた元国税調査官のシロクマくんが、調査官の人数から読み解く調査の種類について解説します。知っておくと、調査当日の心構えが変わります。
先に結論
・誰が来る?……個人事業主・フリーランスの一般的な調査は、ほとんどが所轄の税務署の調査官です。国税局(料調・査察)は高額・悪質な限られた事案だけです。
・何人で来る?……税務署の調査は1〜2名が基本です。1人なら一般的な調査、2人は若手の指導同行が最多、3人以上は専門官の同行や大型案件です。
人数と所属を名刺で確認すれば、調査の本気度をその場で読み解けます。
税務調査は誰が来る?税務署と国税局の違い
個人事業主やフリーランスの税務調査は、ほとんどの場合、管轄の税務署の調査官が来ます。国税局が出てくるのは、申告漏れの金額が大きい、悪質性が疑われる、といった限られたケースです。まず「誰が来るのか」を組織の違いから整理します。
| 比較項目 | 税務署 | 国税局 |
|---|---|---|
| 来るケース | 個人事業主・フリーランス・中小規模の一般的な調査の大半 | 申告漏れが高額・広域、悪質性が疑われる案件 |
| 調査の性質 | 任意調査 | 任意調査(資料調査課)/強制調査(査察) |
| 人数の目安 | 1〜2名 | 複数名(班体制) |
| 事前通知 | 原則あり(証拠隠滅のおそれ等で例外的に無予告) | 任意調査は原則あり/査察は裁判官の許可状による強制 |
| 代表的な部署 | 個人課税部門・法人課税部門、特別調査部門(トクチョウ) | 課税部資料調査課(料調・リョウチョウ)、調査部、査察部(マルサ) |
※「料調(リョウチョウ)」は国税局の資料調査課、「マルサ」は査察部、「トクチョウ」は税務署の特別調査部門の通称です。なお「特別国税調査官(特官)」は税務署にも置かれる役職で、国税局では特官部門という区分が使われます。
個人事業主・フリーランスに来るのは基本的に税務署
普通に事業をしている個人事業主やフリーランスのもとに、いきなり国税局の査察(マルサ)が来ることはまずありません。日常的な税務調査は、所轄の税務署の調査官が1〜2名で行うのが基本です。国税局の資料調査課や査察が動くのは、多額の不正所得が見込まれるなど、限られた事案に絞られます。多くの方は「税務署の一般的な調査」を前提に備えるのが有効です。取引が高額・広域・複雑な場合は、国税局の調査の可能性も意識しておくと安心です。
では、その税務署の調査官は何人で来るのでしょうか。ここからは人数別に、調査の種類と目的を読み解いていきます。
調査官の人数と役職はいつわかるのか
事前通知で人数が伝えられる
税務調査には「予告あり」と「予告なし(無予告)」の2種類があります。
予告ありの場合、事前に税務署から連絡があり、日程調整の後に正式な「事前通知」が行われます。この事前通知で、調査日時、調査場所、対象税目、対象期間とあわせて、調査官の氏名と人数が伝えられます。つまり、調査当日より前に「誰が何人で来るのか」がわかります。
無予告調査の場合は、事前連絡なしで調査官がやってきます。人数も当日までわかりません。ただし、無予告調査は体感で全体の1割以下です。現金商売や不正の疑いがある場合など、限られたケースで実施されるもので、普通に事業をしている方にはまず関係ありません。
顧問税理士がいる場合、調査官の名前と所属を伝えれば、その調査官のキャリアや実力をある程度教えてもらえることがあります。税理士向けの有料データベースや、税理士会のサイトで職員名簿を閲覧できるためです。
調査官の役職を知っておこう
人数の話に入る前に、調査官の役職について説明しておきます。名刺交換の際に役職を見れば、相手の経験値がわかります。
一般的な役職は以下のとおりです。
事務官は、入局1〜3年目の新人です。まだ「調査官」の資格を持っていない見習い的な立場です。
調査官は、一般的な調査担当者です。採用後に一定の研修を受けた後、昇格して任命されます。
上席調査官は、ベテランの調査官です。経験豊富で、部下の指導も担当します。
管理職・専門職としては、統括官と特別調査官(特官)があります。統括官は部門のリーダーで、複数の調査官をまとめる管理職です。特官は大規模法人を担当する調査のスペシャリストで、統括官と同等クラスです。中には副署長レベルの特官もいます。
統括官は「部門を管理する人」、特官は「大規模法人を専門に担当する人」という違いがあります。名刺に「特別国税調査官」とあれば、相当な経験者です。
調査官が1人──一般的な調査
どんな理由で実施されるのか
調査官が1人で来る場合は、特別な目的のない一般的な調査であることがほとんどです。
例えば、5〜10年ほど調査が来ていなかった。たまたま調査対象として選ばれた。少し気になる情報(資料やタレコミなど)があった。このような理由で実施されるもので、「何か大きな不正を疑われている」というわけではありません。
ただし、個人事業主の場合、何か数字に違和感を持って調査に入るケースが多いです。所得が異常に低い、経費が異常に多額など、申告内容に不自然な点があったということです。
来る調査官のパターン
1人で来る調査官は、若手からベテランまで様々です。
若手の事務官や調査官が経験を積むために来ることもあれば、中堅の調査官が通常業務として来ることもあります。ベテランの上席調査官が効率重視でさっと終わらせに来ることもあります。
最近は税務署も人手不足で、教育係が足りないこともあり、入局1年目の事務官が1人で来ることも珍しくなくなっています。若手だからといって油断は禁物ですが、過度に身構える必要もありません。
調査官が2人──3つのパターンを見分ける
調査官が2人で来る場合は、いくつかのパターンが考えられます。ここが最も複雑なので、詳しく解説します。
パターン1:若手の指導目的(最も多い)
組み合わせ:若手調査官 + ベテラン(上席調査官・統括官など)
最も多いパターンです。若手調査官の指導・教育のために、ベテランが同行しているケースです。調査の目的は一般的なもので、特に心配する必要はありません。
見分け方は、ベテランのほうが「上席調査官」「統括官」などの肩書を持っていること。若手が主に質問し、ベテランは見守っている様子であること。この2点で判断できます。
パターン2:特官部門の調査
組み合わせ:特別調査官 + 調査官(調査官付)
特官と呼ばれる、比較的規模の大きな法人を担当する部門の調査です。
税務署管轄の法人の中で、比較的規模が大きな法人が対象になります。具体的な基準は地域によって異なります。都市部と地方では企業規模の分布が違うため、一律の基準はありません。
名刺に「特別国税調査官」と書いてあれば、このパターンです。もう1人は「特別国税調査官付き」という肩書のことが多いです。
特官部門の調査官は、様々な経験を積んだ調査のスペシャリストです。一般調査と比べて調査官のレベルが高いと思っておいてください。ただし、調査の目的自体は一般調査と大きく変わりません。規模の大きな法人には、それなりの調査官が来るということです。
パターン3:特別調査部門(トクチョウ)
組み合わせ:特別調査部門の調査官2名
税務署には「特別調査部門」という部門があります。署によっては「筆頭部門」「特別管理部門」など呼び名が異なります。通称「トクチョウ」です。
この部門は、不正や多額の申告漏れが見込まれる案件を専門に扱っています。調査能力が認められた調査官が配属されています。
特徴として、無予告調査であることが多い。不正の手掛かりとなる資料をすでに入手している可能性が高い。厳しい調査になることは間違いありません。
トクチョウが来る場合は、税務署側が何らかの確証を持っていることがほとんどです。不正や脱税をしていない限り、トクチョウが来ることはまずありません。
調査官が3人以上──専門官同行か大型案件
税務署の調査で調査官が3人以上来るケースは珍しいです。ただし、以下のようなケースではあり得ます。
専門官が同行するケース
通常の2人に加えて、専門的な調査のために専門官が同行するケースです。
国際専門官は、海外取引、外国法人との取引、移転価格税制などを担当します。情報技術専門官は、IT関連の調査や電子データの分析を担当します。
名刺に「国際専門官」「情報技術専門官」と書いてあれば、このパターンです。専門官が同行しているだけで、調査の基本的な流れは変わりません。
資料調査課(リョウチョウ)や査察の場合
国税局の資料調査課(通称リョウチョウ)は、多額の不正所得が見込まれる事案を重点的に調査する部門です。大人数で一気に調査することがあります。
査察(マルサ)は、脱税の刑事責任を追及するための強制調査です。大人数で踏み込んでくるイメージはこれです。
リョウチョウや査察は、大きな不正・脱税をしている自覚がない方には無関係です。3人以上来たからといって必ずしも深刻な事態ではありません。冷静に名刺を確認しましょう。
まとめ──人数を見て冷静に対応する
税務調査の調査官の人数には意味があります。
1人であれば一般的な調査です。2人であれば、若手の指導目的か、特官部門か、特別調査部門かで異なります。名刺で確認してください。3人以上であれば、専門官の同行か大型案件です。冷静に確認しましょう。
不正や脱税をしていない限り、厳しい調査が来ることはありません。人数を見て「ヤバい」と焦るのではなく、「こういう調査なんだな」と理解した上で、落ち着いて対応してください。
税務調査のスポット対応を税理士に依頼すると、立会いから修正申告まで含めて60万円以上の費用がかかるのが一般的です。ケースによっては100万円を超えることもあります。
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税務調査の人数・調査官に関するよくある質問
税務調査は何人で来ますか?
個人事業主・フリーランスの一般的な税務調査では、税務署の調査官が1〜2名で来るのが基本です。1人なら特別な目的のない一般調査、2人なら若手の指導同行が最も多いパターンです。3人以上は国際専門官などの同行か、国税局が動く大型案件に限られます。
税務調査では誰が来ますか?税務署と国税局の違いは?
日常的な税務調査は、所轄の税務署の調査官が担当します。国税局の資料調査課(料調)や査察(マルサ)が出てくるのは、申告漏れが高額・広域、悪質性が疑われるなど限られた事案です。普通に事業をしている方のもとに、いきなりマルサが来ることはまずありません。
調査官が2人で来たら厳しい調査ですか?
必ずしもそうではありません。2人で来る場合で最も多いのは、若手調査官の指導のためにベテランが同行するケースで、目的は一般的な調査です。名刺で役職を確認し、若手が主に質問してベテランが見守る様子であれば、過度に身構える必要はありません。特別調査部門(トクチョウ)の2名など、厳しい調査のパターンもあるため、名刺の所属を確認することが大切です。
税務調査は予告なし(無予告)で来ることはありますか?
あります。ただし無予告調査は体感で全体の1割以下です。現金商売や不正の疑いがある場合など限られたケースで実施されるもので、多くの方は事前通知のある調査です。事前通知では調査官の氏名と人数が伝えられるため、当日より前に「誰が何人で来るのか」がわかります。