税務調査が来る確率は?個人事業主・法人別の実態を元国税調査官が解説

税務調査が来る確率は?個人事業主・法人別に元国税調査官が解説

この記事のポイント

・税務調査が来る確率は、個人事業主で年間約1%、法人で約1.7%です。

・ただし、調査を受けた約8割で申告漏れが見つかっています(個人83.5%・法人77.8%)。

・1件あたりの追徴税額は個人241万円・法人634万円。税務署はランダムではなく、KSKやAIで調査すべき申告を選び出しています。

「自分のところにも税務調査って、本当に来るの?」

確定申告や決算を終えるたびに、こんな不安を感じたことはないでしょうか。

結論から言えば、個人事業主にも法人にも税務調査は来ます。ただし、全員に来るわけではありません。

この記事では、元国税調査官の立場から、税務調査が来る確率を個人事業主と法人の両方について解説します。あわせて、税務署がどうやって調査対象を選んでいるのかを、国税庁の最新の公表データをもとにお伝えします。

税務調査が来る確率は?個人・法人別の実調率

個人事業主に税務調査が来る確率は約1%

まず個人事業主から見ていきましょう。

国税庁が公表している令和6事務年度(令和6年7月〜令和7年6月)のデータでは、所得税の実地調査件数は46,896件でした。一方、事業所得者は約166万人です。

所得税の実地調査には不動産の譲渡に関する調査も含まれます。これを踏まえると、実際に事業を営む事業所得者に対する実調率は、おおよそ1%前後の範囲です。100人に1人程度の割合と考えてください。

なお、ここでいう実地調査には、特別調査・一般調査と、論点を絞って短期間で行う着眼調査が含まれます。

所得税の実地調査件数の推移(国税庁公表データ)
3.1万件

4.6万件

4.8万件

4.7万件

R3
R4
R5
R6

出典:国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」
※R3はコロナ影響で件数が低水準。R4以降は回復し、高い水準で推移。

コロナ禍で一時的に減少した調査件数は、令和4事務年度以降に回復し、高い水準を維持しています。

法人に税務調査が来る確率は約1.7%

次に法人です。

国税庁が公表した令和6事務年度(令和6年7月〜令和7年6月)の法人税の実地調査件数は、5万4千件でした。一方、法人税の申告を行った法人数は約320万社です。

これを単純に割ると、法人が税務調査を受ける確率は約1.7%。およそ60社に1社の割合です。

ただし、この母数にはペーパーカンパニーや休眠状態の法人も含まれています。実際に事業活動を行っている法人に絞れば、実調率はもう少し高くなります。

個人・法人の確率と追徴額をひと目で比較

個人事業主と法人の主な数字を並べると、違いがはっきりします。

項目 個人事業主(R6) 法人(R6)
実調率 約1% 約1.7%
非違割合 83.5% 77.8%
1件あたり追徴税額 241万円 634万円
1件あたり申告漏れ所得 1,240万円 1,508万円

出典:国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」/「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」

なお、法人の非違割合77.8%は法人税の実地調査をベースにした数値、1件あたり追徴税額634万円は法人税と消費税を合算した実地調査の平均値です。集計の母集団が異なるため、両者は厳密には同一の対象を指していない点にご留意ください。

追徴税額の絶対値は法人の方が大きい一方、非違割合は個人の方が高くなっています。個人事業主は法人に比べて経理体制が手薄になりがちで、意図せず申告に誤りが生じやすいという背景があります。

法人の代表者が個人事業も営んでいる場合、法人だけでなく個人の申告もあわせて調査対象になることがあります。どちらか一方だから安心、とは言えません。

「確率が低い」と単純計算で安心できない理由

年間の実調率だけを見ると、確かに低い数字に見えます。

しかし、個人事業を10年続ければ、単純計算で約10%の確率で一度は税務調査を受けることになります。年数を重ねるほど、その可能性は積み上がっていきます。法人も実調率1.7%を「60年に1回」と読むのは早計です。母数に休眠法人を含むため、実態のある法人に絞れば確率は上がります。

そして後で詳しく述べますが、税務署は調査先をランダムに選んでいません。「全体の確率が低いから安心」とは言えないのです。

税務署はどうやって調査対象を選んでいるのか

KSKシステムとAIによる選定の仕組み

税務署は、KSK(国税総合管理システム)というシステムで、申告データを一元管理しています。

KSKは、調査対象の選定における一次のふるいです。過去の申告内容や業種ごとの平均値と比較し、異常値のある申告を自動的に抽出します。

さらに近年は、AIを活用した予測モデルも導入されています。AIが過去の調査データから不正のパターンを学習し、リスクの高い納税者と想定される手口を事前に判定します。調査官はその結果に加え、申告書や手元の資料情報を分析したうえで、調査を実施するかどうかを最終判断します。

調査件数が絞られているにもかかわらず追徴税額が増えているのは、この「少数精鋭」型の選定が精度を上げている証拠です。

「ランダム」ではなく「シグナル」で選ばれる

税務調査の対象は、くじ引きのようにランダムに決まるわけではありません。

システムで抽出された申告書をもとに、税務署内部の会議、国税庁・国税局の方針(今年はこの業種を重点的に見よう、という方針があります)、統括官の判断などから選ばれます。

つまり、調査の俎上に上がるのは、何らかの「シグナル」が出ているということです。

確率が高くなる5つの条件

具体的にどんな申告が「シグナル」と見なされるのか。代表的な条件を5つ挙げます。

1つ目は、売上が急に増えた、または急に減ったケースです。前年と比べて大きな変動があると、その理由を確認したいと考えるのは自然なことです。

2つ目は、経費率が同業他社より極端に高いケースです。同じ業種なのに経費の割合だけが突出していれば、過大計上の可能性を疑います。

3つ目は、売上が1,000万円を少し下回っているケースです。消費税の課税事業者となる基準が1,000万円のため、納税義務を避けるために売上を過少申告していないかと疑われます。調査理由としてメジャーな論点の一つです。

4つ目は、無申告や期限後申告を続けているケースです。国税庁は無申告者への調査を重点課題に位置付けています。令和6事務年度の所得税無申告者に対する1件あたりの追徴税額は524万円と過去最高で、全体平均を大きく上回ります。

5つ目は、開業から数年が経過し、一度も調査を受けていないケースです。開業直後は実績データが少なく対象になりにくいのですが、数年分の申告が蓄積されると比較・分析の精度が上がり、選定の対象に入りやすくなります。

これ以外にも、調査対象になりやすい特徴はいくつかあります。詳しくは税務調査が入りやすい会社の特徴7選で解説しています。

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調査を受けた約8割で申告漏れが見つかっている

個人事業主:非違割合83.5%・追徴241万円

令和6事務年度の所得税の実地調査では、調査を受けた46,896件のうち、39,178件で何らかの申告漏れ等が見つかりました。非違割合は83.5%です。

つまり、税務調査が来たら、約84%の確率で何かしら指摘されるということです。

1件あたりの追徴税額は241万円。申告漏れ所得金額は1件あたり約1,240万円に上ります。AIを活用した選定の精度向上もあり、令和6事務年度の追徴税額の総額(調査等)は1,431億円と過去最高を記録しました。

法人:非違割合77.8%・追徴634万円・総額3,407億円

法人も見てみましょう。令和6事務年度の法人税の実地調査では、5万4千件のうち4万2千件で申告漏れ等が見つかりました。非違割合は77.8%です。

1件あたりの追徴税額(法人税・消費税の合計)は634万円。内訳は次の通りです。

項目 1件あたり追徴税額
法人税(加算税・地方法人税含む) 約402万円
消費税(加算税・地方消費税含む) 約232万円
合計 約634万円

出典:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」

さらに注目すべきは、追徴税額の総額です。令和6事務年度の追徴税額(法人税・消費税の合計)は3,407億円。直近10年間で最高値を記録しました。

追徴税額(法人税・消費税)の推移(国税庁公表データ)
2,157

2,517

2,696

2,743

2,367

1,936

2,307

3,225

3,197

3,407

H27
H28
H29
H30
R元
R2
R3
R4
R5
R6

出典:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」(単位:億円)
※R2・R3はコロナ影響で件数が減少。R4以降は増加し、R6は過去最高。

調査件数は前年より減っているにもかかわらず、追徴税額は増えています。件数を絞り、精度の高い案件に集中する傾向が強まっていることがわかります。

不正と認定されたときの代償

申告漏れの中でも、仮装・隠蔽など悪質と判断されたものは「不正計算」として扱われます。

令和6事務年度の法人税調査で不正計算があったと認定された割合(不正発見割合)は23.5%でした。不正1件あたりの不正所得金額は2,337万円です。

仮装・隠蔽が認定されると、通常の追徴税額に加えて重加算税(35〜40%)が課されます。意図的な不正はもちろん、知らずにやっていたケースでも結果的に不正と認定されることがあります。日頃から正確な経理処理を行うことが、最大の防御策です。

申告漏れ・不正が多い業種ランキング

国税庁は、申告漏れや不正が多い業種も公表しています。自分の業種が上位にあるかどうか、確認しておきましょう。

個人:申告漏れ所得が高額な業種

まず個人事業主です。事業所得を有する個人の、1件あたりの申告漏れ所得金額が高額な業種は次の通りです。

順位 業種目 1件あたり申告漏れ所得 1件あたり追徴税額
1 キャバクラ 4,164万円 1,474万円
2 眼科医 3,894万円 964万円
3 ホステス、ホスト 2,968万円 475万円
4 経営コンサルタント 2,734万円 878万円
5 太陽光発電 2,142万円 757万円

出典:国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」参考計表(上位5業種を抜粋)

キャバクラが1位で、追徴税額は1件あたり1,474万円に上ります。上位10業種には、コンテンツ配信(YouTuber・インフルエンサー等)やシステムエンジニアなど、近年伸びた業種も入っています。

法人:不正発見割合が高い業種

次に法人です。法人税の実地調査における、不正発見割合が高い業種は次の通りです。

順位 業種目 不正発見割合 不正1件あたりの不正所得
1 バー・クラブ 62.3% 4,466万円
2 その他の飲食 45.2% 3,176万円
3 外国料理 40.2% 902万円
4 美容 34.5% 3,166万円
5 大衆酒場、小料理 34.4% 1,770万円

出典:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」別表2(上位5業種を抜粋)

飲食業や現金取引の多い業種が上位に並んでいます。飲食店の税務調査美容室・サロンの税務調査では、業種ごとの狙われやすいポイントを個別に解説しています。なお、このランキングに載っていない業種でも調査は行われています。上位にないからといって安心はできません。

国税庁が重点的に見ている類型

国税庁は、特にリスクの高い納税者を重点課題に位置付けています。令和6事務年度の法人税調査では、次の3類型で大きな追徴がありました。

1つ目は消費税の還付申告法人です。実地調査で総額299億円の消費税が追徴されました。還付申告は税務署の審査が特に厳しく、正当な還付でも根拠資料の整備が不十分だと調査対象になりやすい領域です。

2つ目は海外取引法人です。1万件を超える実地調査で、海外取引に係る申告漏れ所得2,096億円が把握されました。外国税務当局との情報交換制度も活用されています。

3つ目は無申告法人です。法人税・消費税あわせて355億円が追徴されました。国税庁はSNSの更新状況や銀行口座の入出金など、あらゆる情報源を使って稼働実態を把握しています。「申告しなければ見つからない」という考えは通用しません。これは個人の無申告でも同じです。

「確率が低いから大丈夫」が危ない理由

来るかどうかは誰にも予測できない

実調率が個人で約1%、法人で約1.7%であることは事実です。しかし、自分がその中に入るかどうかは、誰にもわかりません。

長年真面目に申告してきた方が、ある日突然税務調査を受けるケースは珍しくありません。開業から15年以上たって、初めて電話がかかってきた方もいます。

「来る確率が低いから、対策しなくていい」という考え方は、保険に入らず車を運転するようなものです。

来てから慌てた人が払う代償

税務調査の通知が届いてから税理士を探す場合、費用は高くなります。緊急対応になるためです。

顧問税理士がいない方がスポットで依頼すると、60万円以上かかることも珍しくありません。さらに修正申告が必要になれば、追徴課税も上乗せされます。

詳しい費用の相場は税務調査の費用はいくらかかる?税理士の立会い費用の相場で紹介しています。なお、顧問税理士がいる場合でも、税務調査の対応経験が豊富かどうかで当日の対応力は変わります。元国税の税理士は税務調査に本当に強いのかもあわせてお読みください。

まとめ

税務調査が来る確率は、個人事業主で年間約1%、法人で約1.7%です。

数字だけを見れば低く感じるかもしれません。しかし、事業を長く続ければ、一度は調査を受ける可能性は十分にあります。そして、調査を受けた約8割で申告漏れが見つかり、追徴税額は個人で平均241万円、法人で平均634万円に上ります。

税務署はランダムに調査先を選んでいるわけではありません。KSKシステムやAIを活用し、調査すべき理由がある申告を効率的に選び出しています。

大切なのは、確率を気にすることではなく、「いつ来ても大丈夫」な状態をつくっておくことです。税務調査は来てから慌てるものではなく、日頃から備えておくものです。

スポットで税理士に依頼すると60万円以上かかることもありますが、シロクマくん税務調査あんしんメンバーシップなら、月額約1,000円から(税込)、元国税調査官の税理士による備えを持つことができます。

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税務のシロクマくん

この記事の監修者

税務のシロクマくん(税理士)

税務署一般部門、特官部門、国税局調査部で国税調査官を長年務め、その実績と経験を活かし、現在は税理士として税金や税務調査の情報を発信中。

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