法人の税務調査の確率は?約8割で申告漏れ・追徴平均634万円の実態を元国税調査官が解説

この記事のポイント

・法人が税務調査を受ける確率は、年間で約1.7%です。

・ただし、調査を受けた法人の約8割で申告漏れが見つかっています。

・1件あたりの追徴税額は平均634万円。追徴税額の総額は3,407億円と、直近10年で最高を記録しました。

「うちみたいな小さい会社にも、税務調査って来るの?」

法人を経営していれば、一度はこんな疑問を持ったことがあるのではないでしょうか。

結論から言えば、法人にも税務調査は来ます。そして、調査を受けた法人の約8割で何らかの申告漏れが指摘されています。

この記事では、国税庁が公表した令和6事務年度(令和6年7月〜令和7年6月)の最新データをもとに、元国税調査官の立場から法人の税務調査の実態を解説します。

法人が税務調査を受ける確率はどれくらい?

国税庁の最新データから見る実調率

令和6事務年度の法人税の実地調査件数は、5万4千件です。

一方、法人税の申告を行った法人数は約320万社です。

これを単純に割ると、法人が税務調査を受ける確率は約1.7%。およそ60社に1社の割合です。

ただし、この母数にはペーパーカンパニーや休眠状態の法人も含まれています。実際に事業活動を行っている法人に絞れば、実調率はもう少し高くなります。

追徴税額の推移 ── 総額3,407億円は直近10年で最高

注目すべきは、追徴税額の推移です。

令和6事務年度の追徴税額(法人税・消費税の合計)は3,407億円。直近10年間で最高値を記録しました。

追徴税額(法人税・消費税)の推移(国税庁公表データ)
2,157

2,517

2,696

2,743

2,367

1,936

2,307

3,225

3,197

3,407

H27
H28
H29
H30
R元
R2
R3
R4
R5
R6

出典:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」(単位:億円)
※R2・R3はコロナ影響で件数が減少。R4以降は増加し、R6は過去最高。

調査件数は前年より減っているにもかかわらず、追徴税額は増加しています。件数を絞り、精度の高い案件に集中する傾向が強まっていることがわかります。

「60年に1回」と安心できない理由

実調率1.7%を単純計算すると、「60年に1回」の頻度に見えます。

しかし、先ほど述べた通り、母数にはペーパーカンパニーや休眠法人も含まれています。実態のある法人に絞れば、確率はもっと上がります。

さらに、税務署は調査先をランダムに選んでいるわけではありません。調査すべき理由がある法人を、AIも活用しながら効率的に選び出しています。「全体の確率が低いから安心」とは言えないのです。

調査を受けた法人の約8割で申告漏れが見つかっている

非違割合77.8%と1件あたり追徴634万円の内訳

令和6事務年度の法人税の実地調査では、調査を受けた5万4千件のうち、4万2千件で何らかの申告漏れ等が見つかりました。非違割合は77.8%です。

つまり、税務調査が来たら、約8割の確率で何かしら指摘されるということです。

1件あたりの追徴税額(法人税・消費税の合計)は634万円。直近10年で2番目の高水準です。内訳は以下の通りです。

項目 1件あたり追徴税額
法人税(加算税・地方法人税含む) 約402万円
消費税(加算税・地方消費税含む) 約232万円
合計 約634万円

出典:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」

なお、この数字はあくまで「平均」です。調査で問題が見つからなければ追徴はゼロですし、悪質なケースでは数千万円〜数億円に上ることもあります。

不正が見つかった場合の代償

調査を受けた法人のうち、不正計算があったと認定された割合(不正発見割合)は23.5%です。

不正1件あたりの不正所得金額は2,337万円。仮装・隠蔽が認定されれば、通常の追徴税額に加えて重加算税(35〜40%)が課されます。

意図的な不正はもちろんですが、「知らずにやっていた」ケースでも結果的に不正と認定されることはあります。日頃から正確な経理処理を行うことが、最大の防御策です。

不正発見割合が高い業種ランキング

国税庁は、法人税の実地調査における業種別の不正発見割合を公表しています。令和6事務年度のランキングは以下の通りです。

順位 業種目 不正発見割合 不正1件あたりの不正所得
1 バー・クラブ 62.3% 4,466万円
2 その他の飲食 45.2% 3,176万円
3 外国料理 40.2% 902万円
4 美容 34.5% 3,166万円
5 大衆酒場、小料理 34.4% 1,770万円
6 自動車修理 32.9% 638万円
7 船舶 31.0% 1,630万円
8 土木工事 30.4% 1,750万円
9 職別土木建築工事 30.1% 1,694万円
10 中古品小売 30.1% 2,713万円

出典:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」別表2

飲食業や現金取引の多い業種が上位に並んでいます。ただし、このランキングに載っていない業種でも調査は行われています。自社の業種が上位にないからといって安心はできません。

国税庁が重点的に調査している3つの法人

国税庁は、特にリスクの高い法人を重点課題として位置付けています。令和6事務年度の結果を見てみましょう。

消費税還付申告法人 ── 追徴299億円

消費税の還付申告を行った法人に対する実地調査では、総額299億円の消費税が追徴されました。うち不正計算に係る追徴税額は51億円に上ります。

還付申告は税務署の審査が特に厳しい領域です。正当な還付であっても、根拠資料の整備が不十分であれば調査対象になりやすいと言えます。

海外取引法人 ── 申告漏れ所得2,096億円

海外取引を行っている法人に対する調査では、1万件を超える実地調査が実施され、海外取引に係る申告漏れ所得2,096億円が把握されました。

外国税務当局との情報交換制度も活用されており、海外に資産や取引がある法人は、国税庁の監視対象として常に意識しておく必要があります。

無申告法人 ── 追徴355億円

申告義務を果たしていない無申告法人に対しては、法人税・消費税合わせて355億円が追徴されました。うち不正計算に係る追徴税額は228億円です。

国税庁はSNSの更新状況や銀行口座の入出金など、あらゆる情報源を活用して無申告法人の稼働実態を把握しています。「申告しなければ見つからない」という考えは通用しません。

AIを活用した調査選定の実態

国税庁は現在、AIを活用した予測モデルにより調査必要度の高い法人を抽出しています。

具体的には、AIが過去の調査データから不正パターンを学習し、リスクの高い法人と想定される不正の手口を事前に判定します。調査官はこの判定結果に加え、申告書や保有する資料情報を分析した上で、調査の実施を最終判断します。

つまり、調査官の経験とAIの分析を組み合わせることで、調査の精度が年々向上しているのです。

実際に、調査件数は減少しているにもかかわらず追徴税額が増加しているのは、この「少数精鋭」型の調査が功を奏している証拠です。

法人が税務調査に備えるためにできること

日常的な帳簿管理と証憑の整備

税務調査で最も重要なのは、日頃からの帳簿管理と証憑(領収書・請求書等)の整備です。

調査官は、帳簿と実態の整合性を確認します。帳簿が正確で、取引の根拠となる書類がきちんと保管されていれば、調査はスムーズに進みます。

逆に、帳簿の不備や証憑の紛失があると、それだけで調査官の関心を引くことになります。

顧問税理士がいても「税務調査対応力」は別

顧問税理士がいるから安心、とは限りません。税務調査の対応経験が豊富な税理士と、日常の記帳・申告を中心に業務を行う税理士では、調査時の対応力に差があります。

税務調査が入る前に、「うちの顧問税理士は調査に対応できるか」を確認しておくことも大切です。詳しくは税務調査が入りやすい会社の特徴で、調査対象になりやすい法人の傾向も解説しています。

なお、法人の代表者が個人事業も営んでいる場合、法人だけでなく個人の申告も調査対象になることがあります。個人事業主の税務調査確率と選定基準もあわせて確認しておくことをお勧めします。

まとめ

法人が税務調査を受ける確率は、年間で約1.7%です。

しかし、調査を受けた法人の約8割で申告漏れが見つかり、1件あたりの追徴税額は平均634万円に上ります。追徴税額の総額は3,407億円と、直近10年で最高を記録しました。

国税庁はAIを活用した調査選定を進めており、調査件数を絞りながらも追徴額を増やすという「少数精鋭」型の調査を行っています。今後もこの傾向は続くと見られます。

大切なのは、確率を気にすることではなく、日頃から「いつ調査が来ても問題ない」状態をつくっておくことです。

税務調査の全体的な流れを知りたい方は税務調査の流れを元国税調査官が解説もあわせてお読みください。調査官の人数から調査の本気度を読み解く方法は税務調査の調査官は何人で来る?で解説しています。

税務のシロクマくん

この記事の監修者

税務のシロクマくん(税理士)

税務署一般部門、特官部門、国税局調査部で国税調査官を長年務め、その実績と経験を活かし、現在は税理士として税金や税務調査の情報を発信中。

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