美容室・サロンの税務調査|現金商売が狙われる理由と対策を元国税調査官が解説

美容室・サロンは税務調査の対象になりやすい

現金商売は国税庁の重点ターゲット

国税庁が公表している申告漏れ所得金額の業種別ランキングでは、現金比率が高い業種が上位を占めています。令和6事務年度のトップ10には、キャバクラ(1位)、ホステス・ホスト(3位)、バー(6位)、スナック(9位)と、現金商売が4業種もランクインしています。

(出典:国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」)

美容室・サロンもまた、現金売上の比率が高い業種です。キャッシュレス決済が普及してきたとはいえ、現金払いのお客さんはまだ多い。国税庁が「現金商売」を重点的に見ている以上、美容室も例外ではありません。

「小規模だから来ない」は通用しない

「うちは小さなサロンだから税務調査なんて来ない」と思っている方は多い。しかし、規模の大小は調査対象の選定基準ではありません。

むしろ、個人経営の小規模サロンほど経理が曖昧になりやすく、調査官にとっては指摘しやすい対象です。開業から数年経って売上が安定してきた頃が、最も調査が来やすいタイミングです。具体的に個人事業主に税務調査が来る確率を知っておくと、備えの重要性がより実感できるはずです。

美容室の売上は税務署にどう把握されるのか

ホットペッパー等のプラットフォーム予約

現在の美容室集客はホットペッパービューティーなどの予約プラットフォームが主流です。

プラットフォーム経由の予約・決済データは、税務署から見れば筒抜けの状態です。大手プラットフォームは国税局からの要請に基づき、取引について税務署に資料せんとして提出ことがあります。そこで、誰に対していくら支払ったか、というデータは把握しているわけです。ホットペッパーのような大きなプラットフォームは、常に国税側もデータを持っていると認識しておいたほうが良いでしょう。

プラットフォーム上の予約件数や売上金額と、確定申告の売上額に大きなズレがあれば、それだけで調査の端緒になります。

個人LINEやSNSでの予約も記録が残る

ホットペッパーを通さず、美容師個人のLINEやInstagramのDMで予約を受けているケースも多いでしょう。「プラットフォームを通していないから把握されない」と思うかもしれませんが、お客さんの入金記録やカード決済履歴は残ります。

税務調査では、売上の「抜け」がないかを多方面から照合します。レジの記録、予約台帳、銀行口座の入金、カード会社からの入金明細。これらを突き合わせて矛盾がないかを確認するのが調査の基本です。

カード決済との照合

クレジットカードや電子マネーの決済データは、カード会社から税務署に提供される支払調書で把握されます。現金売上を少なめに申告していても、カード決済分の売上から実際の客数を推計され、現金売上の過少計上を指摘されるケースがあります。

美容室の税務調査で指摘されやすいポイント

現金売上の計上漏れ

最も多い指摘事項は、現金売上の計上漏れです。レジを通さずに受け取った代金、閉店後の個人的な施術で受け取った代金など、帳簿に載っていない売上がないかを調査官は徹底的に確認します。

「少額だから」「たまたまだから」は通用しません。売上はすべて計上する。これが鉄則です。

材料費・仕入れの水増し

シャンプー、カラー剤、トリートメントなどの仕入れ経費は美容室の主要な経費です。仕入れ量と施術回数のバランスが不自然であれば、調査官は疑問を持ちます。

なお、仕入れた材料を個人的に使用している場合でも、通常はそれほど大きな金額にはならないため、按分が問題になることは多くありませんが、明らかに事業と無関係な商品を仕入れに含めている場合は別です。

プライベートの支出を経費に混ぜている

美容室オーナーに多いのが、個人的な美容品や衣服を事業経費に含めてしまうケース。「サロンの仕事で使う」と主張しても、調査官は経費の中身を一つひとつ確認します。

事業に直接関係のない支出が経費に混在していれば、否認されるだけでなく、「他にもあるのでは」と調査が深くなる原因になります。調査が長引けば税務調査対応にかかる費用も膨らむため、日頃から経費の整理を徹底しておくことが大切です。

元国税調査官が教える美容室の税務調査対策

すべての売上をレジに通す

現金払い、カード払い、電子マネー、プラットフォーム経由、個人LINE予約。どの経路の売上も、必ずレジに通して記録を残してください。売上の記録が正確であれば、調査は短時間で終わります。

予約台帳を整備する

予約台帳(紙でもデジタルでも可)は、売上の裏付け資料になります。日付、お客さんの人数、施術メニュー、金額が記録されていれば、調査官の質問にスムーズに回答できます。ホットペッパーの管理画面データもバックアップを取っておきましょう。

事業用口座を分ける

サロンの売上入金とプライベートの入出金が同じ口座に混在していると、調査が長引く原因になります。事業用の口座を一つ用意し、売上はすべてその口座に入金する仕組みを作ってください。

日々の記帳を習慣にする

施術が忙しく、経理まで手が回らないという声は多い。しかし、1日5分の記帳が、将来の数十万円〜数百万円の追徴を防ぎます。クラウド会計ソフトを使えば、レジデータや口座データと自動連携でき、記帳の手間は最小限に抑えられます。

税務調査に備えて専門家とつながっておく

美容室オーナーで顧問税理士がいる方は少数派です。日々の施術に追われ、「いざ調査が来たら誰に相談すればいいかわからない」という状態は危険です。

税務調査の連絡は突然来ます。その時に慌てないために、日頃から専門家との接点を持っておくことが最も確実な備えです。税務調査がどのような流れで進むのかを事前に知っておくだけでも、心構えが変わります。

まとめ:現金商売だからこそ「備え」が必要

美容室・サロンは、現金売上が多く、プライベートと事業の境界が曖昧になりやすい業種です。国税庁が現金商売を重点的に調査している以上、美容室オーナーにとって税務調査は決して他人事ではありません。

税務調査は、来てから慌てるものではなく、日頃から備えておくものです。

もし税理士にスポットで税務調査対応を依頼すると、費用は60万円以上。ケースによっては100万円を超えることもあります。

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なお、「税務調査を拒否したらどうなるのか」という疑問をお持ちの方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

税務のシロクマくん

この記事の監修者

税務のシロクマくん(税理士)

税務署一般部門、特官部門、国税局調査部で国税調査官を長年務め、その実績と経験を活かし、現在は税理士として税金や税務調査の情報を発信中。

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