副業の税務調査、平均追徴747万円—メルカリ・Uber・YouTuberに国税が向ける目

シロクマくんがスマホと荷物を持ち、シェアエコ関連アイコンに囲まれる—副業の税務調査平均747万円のイメージ

メルカリで不用品を売っていたら、いつの間にか「事業」と呼べる規模になっていた。Uber Eatsの配達を週末だけ続けている。YouTubeの広告収入が月数万円になってきた。Airbnbで部屋を一室貸し出している—。

「副業だから」「趣味の延長だから」という感覚で続けていた収入が、税務調査の対象になる、と聞くと驚かれる方も少なくありません。けれど、東京国税局が令和5事務年度の統括官会議で配布した内部資料(情報公開法に基づき、適法に開示請求で入手したもの)には、シェアリングエコノミーで稼ぐ方々への調査が、国税組織として継続的な重点課題と位置づけられている、と明記されています。

この記事では、その実態を、内部資料の数字とともに整理してお伝えします。

シェアエコの税務調査、1件あたり平均747万円—国税の公式数値

同じ国税内部資料には、個人課税部門の実地調査のうち、シェアリングエコノミー等として集計された事案について、1件あたり平均約747万円の追徴税額が記録されています。あわせて、追徴税額の中央値が約170万円とも記載されています。中央値とは、調査を受けた方々を追徴税額の少ない順に並べたときに真ん中に来る金額のことです。半分の方はこれより低く、半分の方はこれより高い、という分布です。

「747万円」という数字は、本業の所得が大きい方だけが該当するわけではありません。むしろ、副業として始めて数年、複数の年度にわたって申告を曖昧にしていた方が、まとめて指摘されると、ここまでの金額に達することがある—と理解するのが実態に近いです。一方、中央値の170万円という金額も、急に「払ってください」と言われて用意できる方は多くないはずです。

出典:東京国税局 課税第一部 個人課税課「令和5事務年度 個人課税部門の事務運営に関する参考資料(資料1別冊)」p.16(シェアリングエコノミー等の実地調査の状況)(情報公開法に基づく開示請求により取得)

「シェアリングエコノミー等」として国税が把握している領域

国税が「シェアリングエコノミー等」と呼んでいる領域には、おおむね次のような分野が想定されています。なお、以下はあくまで類型の例示であり、各社・各サービスの違法性を示すものではありません。

カテゴリ 具体例
フリマ・ネット販売 メルカリ、ヤフオク、ラクマ、PayPayフリマなど
配達代行 Uber Eats、出前館、Wolt、menu、Amazon Flexなど
民泊・スペースシェア Airbnb、Vrbo、スペースマーケットなど
スキルシェア・クラウドソーシング ココナラ、ランサーズ、クラウドワークスなど
動画・配信プラットフォーム YouTube広告収入、TikTok、ライブ配信の投げ銭・ギフトなど
広告・アフィリエイト アフィリエイトASP、ブログ広告収入など
暗号資産・NFT 仮想通貨取引、NFT売買など(先端分野取引者として別途警戒)

「不用品の整理だから雑所得にならないだろう」「お小遣い稼ぎだから申告は不要」というのは、規模次第で当てはまらなくなる場面があります。たとえばフリマでも、単なる不用品(生活用動産)の譲渡は非課税の取扱いになることが多い一方で、販売目的で仕入れたものを継続的に売る場合は、事業所得または雑所得として申告対象になります(国税庁タックスアンサー No.3105 譲渡所得・No.1500 雑所得・No.1350 事業所得 などをご参照ください)。

重点5項目の中の比較的新しい領域として、3年連続で継承

国税は「実地調査の重点課題」として5つの取組を明示しており、シェアリングエコノミー等新分野はそのうちの一つです。同じ重点5項目が、令和4年・令和5年・令和6年の3つの事務年度を通じて、内容も順序も変わらず継承されています。重点5項目の全体像については、国税の重点5項目を3年連続資料で読み解いた記事で詳しくお伝えしています。

5項目のうち、①消費税・②国際化・③富裕層・④無申告は比較的古くからのテーマで、⑤シェアリングエコノミー等は2010年代後半に経済として大きくなった、比較的新しい領域です。3年連続で継承されている、ということは、国税組織が「短期的なキャンペーン」ではなく「中長期で取り組み続ける領域」として位置づけている、と読み取れます。

出典:東京国税局 課税第一部 個人課税課「令和5事務年度の課税部門共通の事務運営に当たっての基本的な考え方及び留意事項」p.4/東京国税局 令和6年7月全管特官・統括官会議資料 p.5

資料源の開発という重点取組—プラットフォーム経由の収入はどう把握され得るか

「とはいえ、私のメルカリ収入を国税はどうやって知るんですか」という疑問が出てくるかもしれません。

同じ国税内部資料には、シェアリングエコノミー分野について、「資料源の開発」「資料情報の収集」が継続的な重点取組として位置づけられている、と書かれています。具体的な仕組みの詳細は内部資料の中でも一部不開示の取扱いになっており、すべてを公開する性格のものではありませんが、複数の資料から読み取れる範囲では、以下のような事実が確認できます。

  • 銀行口座の入出金情報は、国税の照会対象になり得る
  • 各種プラットフォームからの取引情報・支払情報は、資料情報として収集・活用され得る
  • SNSやブログでの活動情報も、無申告者の把握ルートとして言及されている

プラットフォーム経由の収入は、ご自身が申告した金額と、別ルートで収集された情報が突合される可能性がある—そう前提しておくのが安全側の発想です。

出典:東京国税局 課税第一部 個人課税課「令和5事務年度 個人課税部門の事務運営に関する参考資料(資料1別冊)」p.16/同 個人課税部門資料 p.66

武蔵府中コールセンターが担当する行政指導の実態

シェアリングエコノミー等の納税者に対しては、国税はまず「行政指導」として接触してくることが多い、と内部資料に書かれています。「行政指導」と「調査」の区別については税務署から連絡が来たときの調査と行政指導の違いをまとめた記事で詳しく整理していますので、用語が気になる方はあわせてお読みください。

東京国税局では、シェアエコ事案の行政指導を、武蔵府中署にある「コールセンター」が担当する運用が示されています。同じ内部資料には、令和4事務年度に東京国税局管内で実施されたシェアエコ等事案の行政指導の件数が、前年の363件から528件に増加した、という記載があります。さらに、この528件のうち、行政指導に応じなかったのが328件、さらにそのうち6件が「着眼調査(机上)」として処理に移行した、と記されています。

「お尋ね文書が届いたが、面倒なので放置」というのは、状況次第で実地調査へのステップアップを招くことがあり得る、ということです。武蔵府中コールセンターのような電話オペレーションの集約の仕組みや、国税のモバイルPC・携帯プリンタ活用といったIT化の全体像については、税務調査のIT化最前線をまとめた記事もあわせてご覧ください。

出典:東京国税局 課税第一部 個人課税課「令和5事務年度 個人課税部門の事務運営に関する参考資料(資料1別冊)」p.16(シェアリングエコノミー等の実地調査・行政指導の状況)/同 個人課税部門資料 p.17

確定申告で気をつけたいポイント—業態別の論点

シェアリングエコノミーで稼いでいる方が、確定申告を組み立てるときの典型的な論点を、業態別に整理しておきます。

フリマ・ネット販売(メルカリ等):単なる不用品の譲渡(生活用動産の譲渡)は非課税の取扱いになることが多いですが、販売目的で仕入れたものを継続的に売る場合は、事業所得または雑所得として申告対象になります。販売記録・仕入記録を年単位で残しておくのが基本です。

配達代行(Uber Eats等):基本は雑所得または事業所得です。プラットフォームから発行される支払調書・年間取引明細を必ず保管し、ガソリン代・自転車減価償却・スマホ通信費の按分など、必要経費の算定根拠を残します。

民泊(Airbnb等):いわゆる民泊サービスは、国税庁の整理上は一般に雑所得として取り扱われます(国税庁タックスアンサー No.1906 などをご参照ください)。単なる不動産賃貸の所得(不動産所得)とは取扱いが異なります。住宅宿泊事業法の届出有無、年間営業日数、家事按分など個別論点が多く、税理士相談が向いている領域です。

YouTube・ライブ配信:Google AdSenseからの広告収入、スーパーチャット・投げ銭、企業案件の収入それぞれで申告区分が異なります。また、報酬の支払者が国内事業者で報酬の種類が所得税法204条に列挙されたものに該当する場合は、源泉徴収の論点が生じます(国税庁タックスアンサー No.2792 をご参照ください)。一方、海外プラットフォームからの送金は、消費税の課否(国境を越える役務提供の取扱い)などの別論点が絡みますが、源泉所得税の論点は支払者の属性によって判定が変わるため、ご自身のケースに当てはめての確認が必要です。

個人課税部門全体の調査では1件あたり平均約438万円の追徴という数字も出ています(数字の内訳や中央値については個人の税務調査の追徴税額438万円の実態をまとめた記事で詳しく整理しています)。シェアエコの場合はここに加えて、複数年分まとめて指摘されると747万円という数字が現実味を帯びてくる、という構造です。

なお、所得税の確定申告が不要なケースであっても、住民税の申告がお住まいの市区町村に対して別途必要になる場合があります。判断に迷う場合は、税務署や市区町村の窓口、税理士にご相談ください。

メンバーシップで備えるという選択肢

シェアリングエコノミーで稼いでいる方の多くは、「税理士をつけるほどではない」「でも申告の組み立てが正しいかは不安」という、ちょうど中間の悩みを抱えています。

シロクマくん税務調査あんしんメンバーシップは、長年国税で調査現場に立ってきた元国税調査官(シロクマくん)が運営する、税務調査のための備えのメンバーシップです。顧問税理士をつけているわけではないけれど、いざというときに頼れる場所が欲しい—そんな個人事業主・フリーランス・副業ワーカーの方々のために設計しました。

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税務のシロクマくん

この記事の監修者

税務のシロクマくん(税理士)

税務署一般部門、特官部門、国税局調査部で国税調査官を長年務め、その実績と経験を活かし、現在は税理士として税金や税務調査の情報を発信中。

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