先に結論
・個人事業主・フリーランスに税理士は必須ではありません。ただし、売上の伸び・消費税の課税事業者化・取引の複雑化・税務調査への不安、のいずれかが当てはまると「いた方がよい」場面に入ります。
・国税の内部資料を見ると、税理士が関与している申告は制度対応の精度が高く、税務調査の場面でも有利に働くことがわかります。
・「顧問契約までは要らないが、税務調査だけは備えたい」なら、月額約1,000円から(税込)備える選択肢もあります。
「個人事業主に税理士って、本当に必要なのかな」
確定申告のたびに、こんな疑問を持つ方は多いはずです。顧問料は決して安くありません。一方で、申告の誤りや税務調査への不安もぬぐえない。
この記事では、元国税調査官の立場から、個人事業主・フリーランスに税理士が必要かどうかの判断基準を整理します。あわせて、国税庁・国税局の資料(情報公開法に基づき適法に開示請求で入手したものを含みます)から、税理士の有無で実際に何が変わるのかを見ていきます。
この記事は「税理士が必要かの判断基準・費用・税理士の効果」に絞って解説します。税理士をつけずに自力で調査対応するリスクは税理士なしで税務調査に対応するリスク、元国税の税理士の見極め方は元国税の税理士は税務調査に本当に強いのかでそれぞれ詳しく扱います。
税理士は「必須」ではない。ただし「いた方がよい」場面がある
まず前提として、個人事業主・フリーランスに税理士は法律上の必須ではありません。自分で記帳し、確定申告を行うことは十分に可能です。会計ソフトも普及しています。
では、どんなときに「いた方がよい」のか。代表的な判断基準を挙げます。
1つ目は、売上が伸びてきたときです。所得が大きくなるほど、申告の誤りが招く追徴税額も大きくなります。また、所得が増えれば税務調査の対象に入りやすくなります。
2つ目は、消費税の課税事業者になったときです。売上1,000万円を超える、またはインボイス発行事業者として登録すると、消費税の申告が必要になります。消費税は所得税より計算が複雑で、誤りも起きやすい領域です。
3つ目は、取引が複雑になったときです。複数の収入源、外注、在庫、減価償却、海外取引などが絡むと、自力での正確な申告は負担が大きくなります。
4つ目は、税務調査への備えを持ちたいときです。顧問税理士がいない状態で税務調査の連絡を受けると、相談先がなく一人で対応することになります。税理士なしで税務調査に対応するリスクは、事前に知っておく価値があります。
状況別・税理士の必要度の目安
売上規模と記帳の体制から、税理士の必要度をおおまかに整理すると次の通りです。あくまで目安として、自分がどこに当てはまるかの確認に使ってください。
| 状況 | 必要度 | 考え方 |
|---|---|---|
| 売上が小さく、記帳もできている(免税事業者) | 低 | 自力で申告可。調査の備えだけ持てば十分 |
| 消費税の課税事業者・インボイス登録した | 中 | 消費税は誤りが起きやすい。申告だけでも専門家が安心 |
| 売上が伸びている・取引が複雑(外注/在庫/海外) | 高 | 顧問契約を検討する段階 |
| 記帳が苦手・本業に集中したい | 高 | 時間をお金で買う判断。顧問または記帳代行 |
国税データが示す「税理士の有無で変わること」
「税理士をつけると何が違うのか」を、国税の資料から具体的に見てみましょう。ここが、感覚論ではなく事実で判断できるところです。
インボイスの登録率は、税理士関与で大きく違う
東京国税局の内部資料によると、個人課税の課税事業者(約23万者)のうち、インボイスの登録割合は約70%でした。一方、税理士が関与している申告に限ると、登録割合は約84%に上がります。
この差は、税理士が関与していると、制度変更への対応が漏れにくいことを示しています。インボイスのような新しい制度は、知らないまま放置すると取引や納税で不利になることがあります。専門家が見ていると、こうした取りこぼしが減ります。
出典:東京国税局 課税第一部 個人課税課「令和5事務年度の課税部門共通の事務運営に当たっての基本的な考え方及び留意事項」p.15(情報公開法に基づく開示請求により取得)
税理士の「書面添付」があると、実地調査が省かれることがある
書面添付制度とは、税理士が申告書に「この申告内容を確認しました」という書面を添えて提出する制度です。書面添付がある申告に税務署が疑問を持った場合、いきなり実地調査に入るのではなく、まず税理士に「意見聴取」を行います。
東京国税局の法人課税部門の資料では、意見聴取を行った895件のうち584件、つまり65.3%が「意見聴取の結果、実地調査は不要」と判断されています。署によっては、麻布で89.5%、麹町で100%という数字も出ています。
これは法人課税部門の数値ですが、書面添付制度は個人の申告でも利用できます。税理士が関与し、書面添付まで行っている申告は、税務署にとって「内容の信頼性が高い」と扱われ、調査に発展しにくくなる効果が期待できるということです。
出典:東京国税局 課税第一部「事務実施状況等」分科会資料 p.27-28(情報公開法に基づく開示請求により取得)
国税は「税理士が関与しているか」を管理している
国税の内部資料には、調査事績をシステム(KSK)に入力する際、税理士が関与している事案は「税理士番号」欄を確実に入力する、という指示があります。つまり、国税は申告ごとに税理士の関与の有無を体系的に把握しています。
税理士が関与しているかどうかは、調査対象の選定や調査の進め方にも影響し得ます。専門家が間に入っているという事実そのものが、一つの信頼の材料になります。
出典:東京国税局 課税第一部 個人課税課「令和5事務年度 指示連絡事項」p.27(情報公開法に基づく開示請求により取得)
税理士に頼む3つの選択肢と費用感
「税理士に頼む」と一口に言っても、関わり方は一つではありません。大きく3つに分かれます。
| 頼み方 | 内容 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 顧問契約 | 記帳・申告・相談を継続的に依頼 | 月額数万円〜+決算料 |
| 確定申告だけスポット | 申告書の作成だけ単発で依頼 | 数万円〜十数万円 |
| 税務調査だけスポット | 調査の連絡が来てから立会いを依頼 | 60万円以上(ケースにより100万円超) |
年額に換算すると、差はさらにはっきりします。顧問契約はおおむね年30万〜60万円以上、確定申告だけのスポットは年数万〜十数万円、税務調査スポットは発生時に60万円以上。これに対し、税務調査の備えに絞ったメンバーシップは年1万円台です。「毎月の顧問料は重い、でも調査だけは備えたい」という方には、コスト構造が大きく異なります。
ここで多くの個人事業主が直面するのが、費用のギャップです。顧問契約は手厚い反面、月数万円の固定費は小さくありません。一方、税務調査が来てから慌ててスポットで税理士を探すと、緊急対応のため60万円以上かかることも珍しくありません。具体的な相場は税務調査の費用はいくらかかるかで解説しています。
「毎月の顧問料までは払えない。でも、税務調査のときだけは専門家に頼りたい」。この層にとって、選択肢が顧問契約か高額スポットしかないのが、これまでの実情でした。
税務調査の備えだけなら、月額約1,000円という選択肢
シロクマくん税務調査あんしんメンバーシップは、この費用のギャップを埋めるために設計したサービスです。
長年国税で調査の現場に立ってきた元国税調査官(シロクマくん)が、顧問税理士をつけていない個人事業主・フリーランスのために、税務調査の備えに絞ったサポートを提供します。月額約1,000円から(税込・年払いあり)。スポットで税理士に依頼する場合の10分の1以下のコストで、いざというときの相談先を持てます。
税務署からの連絡は、突然やってきます。その連絡が「調査」なのか「行政指導」なのかを見分け、落ち着いて対応するためにも、日頃から頼れる場所を持っておくことが備えになります。
まとめ
個人事業主・フリーランスに税理士は必須ではありません。しかし、売上の伸び、消費税の課税事業者化、取引の複雑化、そして税務調査への不安が出てきたら、専門家を頼ることを考えるタイミングです。
国税の資料からも、税理士が関与している申告は制度対応の精度が高く、書面添付を通じて調査が省かれることもあるなど、税理士の存在が有利に働く場面があることがわかります。
大切なのは、自分に必要な関わり方を選ぶことです。継続的な記帳・申告まで頼みたいなら顧問契約、税務調査の備えだけでよいなら月額制のサポート。ご自身の状況に合わせて、無理のない備えを選んでください。
本記事の一次情報について
本記事で引用した国税の内部資料は、情報公開法に基づく開示請求により適法に取得したものです。主な出典:東京国税局 課税第一部 個人課税課「令和5事務年度の課税部門共通の事務運営に当たっての基本的な考え方及び留意事項」「令和5事務年度 指示連絡事項」/東京国税局 課税第一部「事務実施状況等」分科会資料。記載の数値は令和5事務年度資料時点のものです。
個人事業主の税理士に関するよくある質問
個人事業主に税理士は必要ですか?
法律上は必須ではありません。自分で記帳・申告は可能です。ただし、売上の増加、消費税の課税事業者化、取引の複雑化、税務調査への備えのいずれかが当てはまると、税理士がいた方が安心です。費用と必要性のバランスで判断してください。
税理士をつけると税務調査は来にくくなりますか?
「来なくなる」とは言えませんが、有利に働く場面はあります。税理士が書面添付を行った申告では、税務署はまず税理士への意見聴取を行い、その結果として実地調査が不要と判断されることがあります(東京国税局の法人課税部門の資料では意見聴取後の実地調査不要率65.3%)。国税は税理士の関与の有無もシステムで管理しています。
顧問契約は高い。税務調査のときだけ頼むことはできますか?
できます。ただし、調査の連絡が来てからスポットで依頼すると、緊急対応のため60万円以上かかることが珍しくありません。費用を抑えて税務調査に備えたい場合は、月額制の税務調査サポートを日頃から持っておく方法もあります。
フリーランスでも税務調査は来ますか?
来ます。税務調査は法人や事業者の規模を問わず行われ、フリーランス・個人事業主も対象です。収入は支払調書や銀行口座の確認などで把握されるため、規模が小さくても申告漏れがあれば指摘の対象になります。
税務調査が来る確率や、税務署がどう調査対象を選ぶかは税務調査が来る確率は?個人事業主・法人別の実態で、元国税の税理士の強みは元国税の税理士は税務調査に本当に強いのかで解説しています。