「税務署です。税務調査に伺いたいのですが…」
前触れのない電話に、多くの個人事業主やフリーランスの方が「何か間違えたのか」「追徴されるのか」と不安になります。
でも、安心してください。税務調査は適正な納税を確認するための通常の手続きです。悪いことをした人だけに来るわけではありません。
この記事では、国税に長年勤め、数多くの税務調査を実施してきた元国税調査官のシロクマくんが、税務調査の流れを7つのステップに分けて解説します。流れを知っているだけで、心の余裕が生まれます。
税務調査は7つのステップで進む
税務調査は以下の流れで進みます。最初の電話連絡から加算税の納付まで、トータルで3〜6ヶ月程度かかるのが一般的です。
- 税務署からの電話連絡
- 事前通知
- 臨場調査(帳簿調査)
- 補完調査
- 指摘事項の提示と交渉
- 調査結果の説明と修正申告
- 加算税の通知で完了
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ステップ1──税務署からの電話連絡
連絡は突然来る。慌てなくて大丈夫
税務調査は、前触れのない電話から始まります。
顧問税理士がいる場合は税理士へ、税理士をつけていない場合は事業主本人に直接、税務署から連絡が来ます。
「○月○日か○日、税務調査を予定していますが、ご都合いかがですか?」
このように候補日を示して日程調整を依頼してきます。突然のことで驚くと思いますが、落ち着いて対応すれば大丈夫です。
日程変更は全く問題ない
「日程を変えたら印象が悪くなるのでは」と心配される方がいますが、全く問題ありません。
すでに予定が入っている、繁忙期で対応が難しいなど、正当な理由があれば日程変更は普通に認められます。調査官にとっても日程調整は日常的なことです。
ただし、理由を簡単に伝え、代わりの日程候補を提示しましょう。
この時点でやるべき3つのこと
電話を受けたら、以下の3つを確認してください。
1つ目は、調査対象期間の確認です。一般的には過去3年分が対象です。過去に遡及する非違がある場合は5年分、悪質な脱税が認められる場合は最大7年分まで遡ることがあります。
2つ目は、帳簿や領収書など資料の所在確認です。どこに何があるかを把握しておきましょう。
3つ目は、顧問税理士がいない場合の税理士への相談です。税理士なしで調査を迎えるのは危険です。日程を少し後ろにずらしてでも、税理士を探す時間を確保してください。
ステップ2──事前通知で伝えられる5つの情報
法律で定められた通知内容
調査日程が確定すると、法律に基づく「事前通知」が行われます。ほとんどの場合、電話で実施されます。
事前通知で伝えられる主な情報は以下の5つです。
- 調査日時
- 調査担当者の氏名
- 調査対象税目(所得税、消費税など)
- 調査対象期間
- 調査場所(自宅や事務所など)
これ以外にも、調査対象となる帳簿書類の種類や、日時・場所を変更したい場合の連絡先なども通知されます。事務的に伝えられるだけなので、聞いてメモを取っておけば大丈夫です。
準備すべき資料リスト
事前通知を受けたら、以下の資料を準備しておきましょう。
- 総勘定元帳
- 領収書・請求書などの証憑書類
- 契約書
- 預金通帳のコピー
- 確定申告書の控え
資料が整理されていない場合は、調査日までに整理する時間を確保してください。資料の状態は調査官の心象にも影響します。
ステップ3──臨場調査(当日の流れ)
午前:事業内容のヒアリング
調査当日、調査官が自宅や事務所にやってきます。個人事業主の場合、一般的に1〜2日間かけて行われます。
まずは名刺交換と挨拶。そして、いきなり帳簿を見るのではなく、事業内容についてのヒアリングから始まります。
- どんな事業をしているか
- 主な取引先はどこか
- 売上の計上方法
- 経費の支払い方法
- 帳簿の作成方法
「これって調査に関係あるのか?」と感じる質問もあると思います。ですが、差し支えなければ答えてください。調査官にとって、事業の全体像を理解することは正確な調査を行うために不可欠です。細かい部分まで聞いてくるのは珍しいことではありません。
答え方のポイントは3つです。正直に答えること。わからないことは「確認します」と言うこと。聞かれたことだけ答え、余計なことは話さないこと。
「たぶん〜だと思います」という曖昧な回答は避けてください。確認してから答えるほうが印象は良くなります。
午後:帳簿・資料のチェック
ヒアリングが終わると、帳簿のチェックに入ります。
調査官が確認する主な資料は、総勘定元帳、領収書・請求書・契約書などの証憑書類、預金通帳、そして会計ソフトのデータです。
最近はパソコン内のデータを確認されることも増えています。会計ソフトのデータやメール、エクセルファイルなどが対象になることがあります。
データ量が多い場合、調査官がUSBメモリを使ってデータのコピーを求めてくることがあります。個人事業主の調査でも行われます。特にやましいことがなければ応じたほうがよいでしょう。ここで拒否すると、別のアプローチで調査される可能性があります。
調査官が帰った後の追加要求
1〜2日の調査が終わると調査官はいったん帰りますが、「この資料を送ってください」「この取引の内訳を教えてください」といった追加の要求が来ることがあります。
これは普通のことです。できるだけ早く、正確に対応しましょう。
ステップ4──補完調査(税務署内での作業)
調査官は何をしているのか
臨場調査が終わっても、税務調査はまだ続いています。
調査官は税務署に戻り、持ち帰った資料やデータを精査します。これを「補完調査」と呼びます。
税務署内で行われている主な作業は、会計データの詳細な分析、不自然な取引がないかのチェック、追加の疑問点の整理です。
この期間中、調査官から追加の質問が来ることがあります。連絡にはいつでも対応できるよう体制を整えておいてください。迅速な対応が調査をスムーズに進めるカギです。
反面調査・銀行照会が行われることもある
ケースによっては、取引先への確認(反面調査)や銀行への照会が行われることがあります。
取引先に税務署から連絡が行く可能性があるということです。問題のある取引でなくても、事実確認のために行われることがあります。
ステップ5──指摘事項の提示と交渉
調査官からの指摘にどう対応するか
補完調査が終わると、調査官から「指摘事項」が提示されます。
「この経費は認められません」「この売上が抜けています」「この処理は間違っています」
このような指摘を受け、修正申告を求められます。
納得できない指摘は議論できる
指摘事項に納得できない部分があれば、議論することができます。
「この経費が認められない理由を教えてください」「こういう事情があったのですが、考慮していただけませんか」
調査官の指摘が必ずしもすべて正しいわけではありません。きちんと説明すれば、指摘が取り下げられることもあります。
ここで税理士がいると心強いです。税理士は法律や判例に基づいて、調査官と対等に議論できます。
修正する内容が固まったら、税務署内部での決裁に進みます。税務署側も決裁を受けた数字で修正申告を受け取る必要があるため、数字のすり合わせは慎重に行われます。
ステップ6──調査結果の説明と修正申告
税務署内部の決裁を経て正式通知
すり合わせた内容について税務署内部の決裁(上司の承認)が終わると、正式な「調査結果の説明」が行われます。
基本的にはすり合わせの段階と同じ内容です。新しい指摘が出てくることはほとんどありません。
修正申告の提出と納税
調査結果の説明が終わると、修正申告書を提出します。そして、追加で納める税金を納付します。
納付するのは、本税(追加の所得税や消費税など)と延滞税(納付が遅れたことに対するペナルティ)です。
納付期限は修正申告書を提出した日です。遅れるとさらに延滞税がかかるので、資金の準備は早めに進めてください。
ステップ7──加算税の通知で完了
修正申告から1〜2ヶ月後に届く
修正申告書を提出して税金を納めても、まだ終わりではありません。
修正申告から1〜2ヶ月後、「加算税」の通知書が郵送されてきます。加算税とは、申告が正確でなかったことに対するペナルティです。
この通知書に記載された金額を納付すれば、税務調査に関するすべての手続きが完了します。
トータル期間は3〜6ヶ月
税務調査の全体のスケジュール感をまとめます。
- 電話連絡から調査日まで:1〜2週間
- 臨場調査:1〜2日
- 補完調査から指摘事項のすり合わせ:1〜3ヶ月
- 修正申告から加算税通知:1〜2ヶ月
トータルで3〜6ヶ月程度です。長い場合は半年以上に及ぶこともあります。
まとめ──流れを知っていれば税務調査は怖くない
税務調査の7つのステップをおさらいします。
- 税務署からの電話連絡
- 事前通知
- 臨場調査
- 補完調査
- 指摘事項の提示と交渉
- 調査結果の説明と修正申告
- 加算税の通知で完了
最も大切なのは、誠実に対応することです。嘘をつかない。隠さない。わからないことは正直に言う。これだけで調査官の印象は大きく変わります。
税務調査のスポット対応を税理士に依頼すると、立会いから修正申告まで含めて60万円以上の費用がかかるのが一般的です。ケースによっては100万円を超えることもあります。
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