税務調査は拒否できる?断ったらどうなる?元国税調査官が法的根拠と対処法を解説

「○○税務署です。税務調査に伺いたいのですが…」

税務調査の電話は、前触れなく突然やってきます。

いきなり言われても困る。できることなら受けたくない。それは誰でも同じです。

では、税務調査は拒否できるのか。断ったらどうなるのか。

この記事では、国税に長年勤め、数多くの税務調査を担当してきた元国税調査官のシロクマくんが、法的な根拠と実務の両面から解説します。

結論──税務調査は断れない。ただし日程調整はできる

質問検査権と受忍義務の法的根拠

結論から言うと、税務調査を完全に断ることはできません。

税務調査は「任意調査」という位置づけですが、国税調査官には「質問検査権」という法律上の権限が与えられています。調査官からの質問には回答する義務があり、帳簿や書類の提示を求められた場合も応じなければなりません。

つまり、任意調査とはいえ、実質的に受忍義務があり、ほぼ強制です。

ただし、「完全に断れない」と申し上げたのには理由があります。調査そのものは拒否できませんが、調査日程の調整や交渉は可能です。この点は後ほど詳しく説明します。

拒否した場合の罰則(国税通則法128条)

正当な理由なく税務調査を拒否した場合、国税通則法128条により、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

条文上は、調査官の質問に答弁しない、偽りの答弁をする、検査を拒む・妨げる・忌避する行為が処罰の対象です。

実際にこの罰則が適用されるケースは多くありませんが、法律上は刑事罰の対象であるということは知っておくべきです。

任意調査と強制調査(マルサ)の違い

ここまで述べたのは「任意調査」の話です。一般の個人事業主やフリーランスの方が受ける税務調査は、ほぼすべてが任意調査です。

一方で、「強制調査」と呼ばれるものもあります。いわゆる査察(マルサ)の調査で、すでに脱税の証拠が収集され、裁判所の令状に基づいて行われるものです。一般の方がこれを受けることはまずありません。

日程変更は普通にできる

調査官も日程調整は「当たり前」と思っている

税務調査の電話では、調査官から「○月○日に伺いたいのですが」と日程を打診されます。

その日が仕事や別の予定で空いていない場合、別の日程を申し出ることは全く問題ありません。

「断ったら調査官の心象が悪くなるのでは」と心配する方がいますが、その必要はありません。他の調査でも日程調整は日常的に発生するので、調査官にとってもごく普通のことです。

そもそも、税務署は仕事の邪魔をしようとして調査に来るわけではありません。私が若手の頃、指導調査官から「納税者の仕事が優先」と教わりました。税務調査によって事業が妨害されることは、国税側にとっても望ましくないのです。

日程変更を申し出るときのポイント

日程変更を申し出る際は、以下の2点を伝えるようにしてください。

1つ目は、なぜその日が対応できないのかという理由です。「仕事の予定が入っている」「出張が重なっている」など、簡単で構いません。

2つ目は、代わりの日程候補です。「その日は対応できません。都合のいい日も未定です」だけでは、調査に協力する意思がないと受け取られかねません。具体的な代替日を提示することで、スムーズに進みます。

国税側も仕事として調査をしているので、納税者側も協力する姿勢を見せることが大切です。

どれくらい延期できるのか

1〜2ヶ月程度の延期は、常識的な範囲として問題ありません。

一方で、3ヶ月以上の延期となると、税務署側にとって調査計画に支障が出ます。3ヶ月以上先延ばしにする場合は、税務署が納得できる理由が必要です。

例えば、税理士の繁忙期(2〜3月の確定申告時期)を理由に延期を申し出ることは正当な理由として認められます。

余談ですが、私が税務署時代に調査の依頼で電話したところ、「来月出産予定で…」という事情で1年延期になったケースもありました。

調査日程を後ろにずらした方がいいケース

税理士がまだ付いていない場合

税理士なしで税務調査を迎えるのは大変危険です。

たとえ申告内容に問題がなくても、税理士を付けることをお勧めします。税理士は税務署と納税者の間に入って調査をスムーズに進めてくれる存在であり、心理的な安心感が大きく違います。

税務調査は1日で終わるものではありません。自宅や事業所での帳簿調査が1〜2日、その後の書類のやり取りや税務署訪問が2〜3ヶ月続くのが通常です。長ければ半年以上かかることもあります。

この数ヶ月間、ご自身がすべて対応するのは心理的な負担が大きく、本業にも影響します。

顧問税理士が付いていない場合は、相性のいい税理士を探す時間を確保するため、日程を後ろにずらしたほうがよいでしょう。

帳簿や資料が整理できていない場合

税務調査では、申告内容の裏付けとなる帳簿、請求書、領収証などの提示が求められます。

これらの資料が整理されていないと、調査に余計な時間がかかるだけでなく、調査官の心象も悪くなります。「資料がこの状態で、申告がきちんと合っているわけがない」と考えるのが自然だからです。

資料の整理が追いついていない場合は、整理する時間を確保してから調査に臨んだほうが賢明です。

税務署からの連絡を無視し続けるとどうなる?

無予告調査に切り替わるリスク

「税務署からの連絡は無視しておけばいい」と考える方がいるかもしれません。

これは最悪の結果を招きかねません。

連絡が取れない場合、税務署は事前通知なしに、無予告で調査に来る可能性があります。突然「税務署です」と訪問されたときのストレスは相当なものです。

調査官の不信感とその後の対応が厳しくなる

連絡が取れないという状況は、国税側にとっても非常に厄介です。

「連絡に応じないということは、何か調査に来られるとまずいことがあるのではないか」

調査官はそう考えます。結果として、初手からエンジン全開で来る可能性が高くなります。調査着手後の交渉も税務署ペースで進められることが想定され、本来であればもっと穏便に済んだはずの調査が、厳しいものになりかねません。

消費税の仕入控除が全額否認される重大ペナルティ

ここからは少しテクニカルな話ですが、非常に重要です。

無予告で調査に入られた結果、帳簿や請求書等を適時に提示できなかった場合、消費税の仕入税額控除が全く認められない可能性があります。

消費税法上、仕入税額控除を受けるためには、帳簿や請求書等を「保存」していることが要件です。ここでいう「保存」とは、単に物理的に保管していればよいという意味ではありません。最高裁の判断では、税務職員による検査に当たって適時に提示できる状態で保存していることが求められるとされています。

つまり、帳簿を持っていても、調査のときに提示できなければ「保存していない」とみなされる可能性があるのです。

仕入税額控除が認められないということは、売上で預かった消費税がそのまま納税額になるということです。事業規模によっては数百万円から数千万円単位の追徴になりかねません。

実際に、調査非協力を理由に仕入税額控除を全額否認された事案は複数あり、裁判でも納税者側が敗訴しているケースがあります。

税務署からの連絡は、絶対に無視しないでください。

まとめ──税務調査の連絡が来たらまず落ち着いて対応する

税務調査は拒否できません。しかし、日程の調整はできます。

大切なのは、調査に協力する姿勢を見せつつ、自分にとって最善の状態で調査を迎えることです。税理士がまだ付いていないなら探す時間を確保する。資料が整理できていないなら整理する時間を取る。それだけでも結果は大きく変わります。

そして、何より避けるべきなのは、連絡を無視することです。無予告調査のリスク、消費税の重大ペナルティ、調査官の不信感。すべてが不利に働きます。

税務調査のスポット対応を税理士に依頼すると、立会いから修正申告まで含めて60万円以上の費用がかかるのが一般的です。ケースによっては100万円を超えることもあります。

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税務のシロクマくん

この記事の監修者

税務のシロクマくん(税理士)

税務署一般部門、特官部門、国税局調査部で国税調査官を長年務め、その実績と経験を活かし、現在は税理士として税金や税務調査の情報を発信中。

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