「税務調査に強い税理士」を探していると、「国税OB」という肩書をよく目にすると思います。
国税出身だから調査に強い。なんとなくそう感じる方は多いでしょう。では、具体的に何が強いのか。本当に国税OBなら誰でも強いのか。
この記事では、国税に長年勤め、税務調査の現場を知り尽くした国税OB税理士であるシロクマくんが、「税務調査に強い税理士とは何か」を正直にお伝えします。国税OBの強みだけでなく、限界についても触れます。
「税務調査に強い税理士」とは何か
強いのではなく「巧い」── 調査をスムーズに終わらせる力
税務調査に強い税理士とは、「税務調査をスムーズに終わらせることができる税理士」です。
「強い」というより「巧い」という表現のほうが適切かもしれません。
ほとんどの方にとって、税務調査は本業とは関係のない義務的なものです。できるだけ早く、できるだけ労力をかけずに終わらせたい。これが多くの方の本音だと思います。
その本音に応えられるかどうかが、税理士の力量です。
調査官の意図を読み取る力が核心
調査をスムーズに終わらせるために最も重要なのは、国税調査官の質問や行動の背景を正確に読み取る力です。
調査官がある質問をしたとき、その裏にはかならず「確認したいこと」があります。その意図を理解して、的確な回答や資料を出せば、調査官はその論点を解決済みとして次へ進みます。
逆に、質問の背景を理解せずに見当違いな回答をしてしまうと、追加資料を求められたり、最悪の場合「この会社の中だけでは事実確認ができない」と判断され、取引先への反面調査や銀行調査に発展することもあります。
反面調査や銀行調査が入れば、調査期間は大幅に延び、本業への影響も格段に大きくなります。
国税OB税理士が税務調査に強いと言われる理由
調査官の行動原理と内部の仕組みを知っている
国税OBの最大の強みは、調査する側の論理を実体験として知っていることです。
調査官は限られた日数の中で調査を終わらせなければなりません。複数の調査案件を並行して抱えており、時間をかける案件とそうでない案件を常に選別しています。
この「選別の基準」や「調査官が何を重視しているか」を知っているかどうかで、対応の質はまったく変わります。
また、修正申告によって増加する所得金額、いわゆる「増差所得」は調査官ごとに集計・管理されています。人事評価の直接的な項目にはなっていませんが、個人別の数字は一目瞭然です。実質的に、数字の良い調査官とそうでない調査官は周囲から見てわかる状態にあります。
この仕組みを知っているからこそ、調査官がどこで踏み込んでくるか、どの指摘が本気でどの指摘に交渉の余地があるかを見極めることができます。
質問の「裏にある意図」がわかる
調査官の質問は、単なる事実確認ではありません。ひとつの質問の裏に、次に確認したい論点が控えていることがほとんどです。
国税OB税理士は、自分自身が調査官として同じ質問をしてきた経験があります。だから、「この質問の先に何を見ようとしているのか」がわかります。
この先読みができるかどうかが、対応のスピードと正確さを大きく左右します。
落としどころの見極めができる
税務調査には、白黒はっきりつく論点と、グレーゾーンの論点があります。
グレーゾーンの論点に対して、どこまで主張し、どこで折り合いをつけるか。この見極めには、調査官側の内部事情を含めた実務感覚が不可欠です。
国税OB税理士は「この指摘はどの程度の根拠に基づいているか」「この調査官はどこまで本気か」を判断する材料を多く持っています。
国税OBなら誰でも強いわけではない
ここからは正直にお伝えします。「国税OB」という肩書だけで税務調査に強いと判断するのは早計です。
専門分野の違いがある
国税の中にも専門分野があります。
法人税と所得税は、どちらも事業の利益に課税するという法体系のため親和性があります。法人税の調査経験が豊富な国税OBであれば、個人事業主の所得税の調査にもその知見を活かせます。
一方で、相続税や贈与税といった資産税の分野はまったく別物です。資産税一筋で長年勤めてきた国税OBは、相続税の調査対応には非常に強いですが、法人の税務調査は専門外ということもあります。
国税OBに依頼する際は、「国税で何を専門にしていたか」を確認することが重要です。
古巣への忖度リスクは実際にあるのか
「国税OBは古巣に忖度するのではないか」という声があります。これは一部で指摘されていることであり、無視できない論点です。
私自身の考えを申し上げます。
税務調査の目的は「適正公平な課税の実現」です。これは国税側にとっても、納税者側にとっても同じです。
国税側の指摘が正しいのであれば、それは適正課税の方向で進めるべきです。一方、古巣であろうとなかろうと、見当違いな指摘や根拠の弱い指摘に対しては断固として反論します。
「古巣だから寄り添う」でも「古巣だから反発する」でもなく、適正な税務調査、適正な課税が根幹にあるべきだと考えています。
調査に「強い」と勘違いされている危険な対応
調査の妨害は顧客に余計な負担をかける
やってはいけないのが、調査の妨害です。
調査官に対して非協力的な態度を取ったり、資料の提出を不必要に拒んだりすることが「税務調査に強い」と勘違いしている税理士が一定数います。
これは、強いのではなく、顧客に余計な負担をかけているだけです。
反面調査・銀行調査に発展するリスク
調査官は限られた日数で調査を完了させる必要があります。問題が解決しない状態で調査を終えることはできません。
その場で解決できなかった場合、調査後も資料のやり取りが続き、調査期間が長引きます。さらに、会社への訪問調査だけが調査の手法ではありません。取引先への反面調査や銀行調査など、別のアプローチで事実関係を確認される可能性が高まります。
「怪しい」という印象を持たれるリスク
調査官は基本的に疑い深く、正義感の強い人間が多いです。
調査の妨害と受け取られるような行為があった場合、「探られたくないことがあるのではないか」と考えます。複数の調査案件を抱える中で、どの案件に時間とリソースを割くかは調査官の判断です。「怪しい」という印象を持たれれば、重点的に調べられることになりかねません。
国税の言いなりにならない──指摘事項の見極め
調査官にも知識不足・経験不足はある
調査をスムーズに進めることは重要ですが、調査官の言うことをすべて受け入れるという意味ではありません。
調査官の中にも経験の浅い方はいます。根拠が曖昧なまま要求をしてくるケースも実際にあります。そのような場合は、毅然とした態度でその要求の根拠を確認すべきです。
ただし、根拠がなくても資料を見せれば納得するようなケースであれば、さっと資料を出して次の論点に進むほうが賢明です。ここは状況判断です。
修正申告の指摘をどう見極めるか
税務調査で最も重要な場面が、指摘事項への対応です。
調査官は修正してほしい事項を提示してきますが、それが本当に修正しなければならない事項なのかどうかを見極められるかどうかは、税理士の力量次第です。
前述したとおり、増差所得の数字は調査官ごとに管理されており、実質的な評価材料になっています。そのため、できるだけ多くの所得を修正申告してもらいたいという意識が働く調査官は少なくありません。
少し無理のある指摘や、グレーゾーンを完全に黒として処理しようとするケースは実務上よくあります。そのような場面で、指摘の妥当性を冷静に見極め、論理的に反論できるかどうか。これが「税務調査に強い税理士」の本質的な要素だと考えています。
税務調査に備えるために今できること
税務調査は、来てから慌てるものではなく、日頃から備えておくものです。
税務調査のスポット対応を税理士に依頼すると、立会い・修正申告対応を含めて60万円以上の費用がかかるのが一般的です。ケースによっては100万円を超えることもあります。
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